「ネド、まあ、落ち込まないで。・・さてと朝食の時間だね」
「どうしようか」
「そうだ、良かったら僕の所へ来ない?研究所へ」
スプームが脇から、明るく声をかけた。
「え」
「お、いいね。ここの宇宙軍の食堂よりおいしいものが食べられそうだ」
「ありがとう、マシアス。パトスが聞いたら泣いて喜びそうだよ。ネド、いいかな?」
「ええ、是非」
「じゃ、決まりだ」
ネドはベッド脇で身支度をしながら、改めて部屋を見回してみた。
大きな床までの窓を通してケネスの柔らかい日差しが部屋に注いでいて、庭には色とりどりの花が咲いている。ケネスではこれが当たり前である。
でも、ネドは改めて、ここはケネス星だと思う。他星を巡ってきた後だから。
「ネド、もういいかい?」
「ええ」
スプームが左前腕を触った。
「患者一人と医者二人をコムの僕の研究所へ」
三人の周りを光が走った。
三人は衛星コムのスプームの研究所へ転送された。
全てのケネス星人は、左前腕に小さなコンピューター端末をつけている。
これは透明シールドで覆われているため、他星人にはわからないようになっている。
この器械を触って、今回はケネス宇宙軍本部の転送機を使って、三人はスプームの衛星コムの研究所へ転送されたのである。
衛星コムの空気は薄く無人無生物であり、たくさんのクレーターのある薄茶の土の塊である。
この地表に建造されたスプームの研究所は、ドーム型で、外側はやはりドーム型の透明シールドで覆われている。
このシールドで万が一の場合の空気の確保、外温度の遮断、ここの太陽から受ける紫外線および人体に害を与える光線の遮断をしている。
三人がこの研究所に着いたとき、研究所は衛星コムの夜の部分に入っていた。
「いらっしゃいませ。ようこそ研究所へ」
三人が光の中からスプームの研究所の大きい居間に実体化すると、満面の笑みの執事のパトスが両手を広げて客を迎えた。
「やあ、パトス久しぶりだね」
「ネドさま、大きくなられましたねえ」
「やあ、パトス」