自分の思考の中に浸っていたサライだが、コントロールルームの士官の上げた声で、現実に戻らされた。
「キャプテン、ハボス艦が、ケネスの子供と最高司令官らを殺したと自星に報告をしているようです」
あの暗殺者は生きてハボスに戻ったのか。サライは思った。自分が殺されないために、殺害を確認してもいないのに。
キャプテン、シュメルは、ただ
「わかった」
とだけ声を上げた。
「艦の速度を上げた方がよろしいでしょうか?」
シュメルは、サライの目線を判断して言った。
「ああ、頼む。早くケネスに戻ろう」
ネドが気になる。そしてケネスが、わが星人達が気になる。
「テラのセンサーの範囲を抜けたら、速度を上げて。センサーに気を付けていてくれ」
シュメルが指示を出す。
「了解」
「了解」
しばらくして、 正面スクリーンを見たキャプテン、シュメルが声を上げた。
「さ、最高司令官。総統です。ラムル総統がギガに乗船しました」
「ええ?」
目線を正面スクリーンに戻すと、確かに総統がネドのベッド脇に立っている。
転送で移動したのだ。
いてもたってもいられなくなったのだろう。
その後のラムル総統の行動が、サライを更に驚かせた。
ラムルはネドに向かって、いわゆるエネルギー注入をし出したのだ。ネドがあまり状態が良くないのだろうか。
(ラムル総統は、たぐいまれなる強力な精神波の持ち主であり、ネドが生まれる以前、今のケネス星に来る前は、それを使って、星人の治療をしていた時期がある)
一方、彼ら、ハボス艦側は、自星を目指して航行を続けている。
今、周りのコントロールルームの乗員たちの心にある、ハボスに対する怒りと、このまま彼等を自星に返すのかとの疑問の気持ちが、そのまま自分の心に突き刺さってくるのを、サライは感じていた。
サライの心は二つに割れていた。
ネドを父親のように心配し、ハボス星に対する煮えたぎる怒りを感じている一方で、最高司令官としての冷めた自分がいた。
この映像を見たケネス星の人々はハボス星人に怒りを感じただろう。自星人たちの感情がどのように揺さぶられるのか、恐怖にも似た大きな恐れが彼の感情を冷ましていた。なにゆえに総統は・・との想いさえ沸いてくる。
やがて、コントロールルームの後方の士官が、声を上げた。