ネドは聞いているうちに、ネットで同時配信されているから、こうも、えらぶってしゃべり続けているのかと、ムカムカと思い始めていた。ここはケネス星なのだから、それはありえない話なのだが。
しかし、まずいなあ。この状況は。
別の人物が、立って話し始めた。
前年に比べて、今回はこの事例で、これ程の経費が掛かったと、少し細かな報告がされた。
ネドは胃が痛くなってきた。
この流れでは、まずい。
サライ最高司令官の声が響いた。
「他に発言するものはいるか?」
「いないようなら、ネド中尉の意見を聞くことにしよう。ネド中尉、始めてくれるかな」
ネドは、ゆっくり立ち上がった。自信はない。
「ケネス星の皆様、いままで宇宙連邦軍へ支援をして下さり、また、現在も支援を続けていただいて、本当にありがとうございます。そして、ケネス星の皆様に多大なご負担をお掛けしてしまっていることについて、私は大変申し訳なく思っています。さて、私は、ここで、今回のこの件につきまして、自分がどう思っているのかを、そのまま皆様にお話ししたいと思っています」
ネドは、ぐるりと会議室の人々を見回した。そして、続けた。
「僕は、皆様ご承知の通り、このケネス星の狭い世界から、大きな世界へ出ることを希望して、地球の宇宙連邦軍上級士官学校へ入り、そして、宇宙連邦軍へ入隊しました。私は、宇宙艦テラに配属になりましたが、とても、この地球人中心の世界には、なじめませんでした。いや、今も、時折、地球人に対しては憤りを感じています。いえ、地球だけというわけではなく、このケネス星以外の人々は、えー、皆様も同じ想いだと思いますが、僕は、彼らは精神の発達をみない人々と言えると思っています。我々ケネスは、団体生活の中で生まれ、その中で生きて、その中で死んでいくという星人そのものが分かって、お互いに相手を大事なものとして扱うということが、生きていく基本であるとわかって、社会を作り上げています。ですが、これは、皆様ご承知の通り、残念ながら、わがケネス星だけなのです。今回の、宇宙連邦軍に対して言うなら、もし我々なら、最初から、ち密な計画を立てるでしょう。一人の死傷者も出さないために。計画実行に、多大な時間がかかることになろうと、我々ケネス星人は、人が一番大事であることが分かっているからです。死傷者を出さないことが、一番大事であるとわかっているからです。しかし、他星、そして、宇宙連邦軍は違います。宇宙連邦軍は、毎年、任務に関わる死傷者を出しています。しかし、宇宙連邦軍幹部の方針は変わりません。ケネス星なら、現場が危険だとわかれば、現場の人間が、方針転換をします。しかし、宇宙連邦軍は、現場が危険だと思っても、その声がそのまま変更権限を持った幹部に伝わり、方針転換がすぐに行われるというシステムさえ、作られてはいないのです。それについては、ある意味、僕ら軍人は、宇宙での任務に危険が伴うことを承知で任務に就いたのだからという、軍人そのものに対する、幹部の考え方があるように思います。宇宙連邦軍側は変わりません。 変わっていきません。