君たちはネメス星人の商人となってネメス星へ侵入してもらう予定だ。我々が救出に当たるのは、反政府勢力側の商人の名前と顔が、すでにネメスの警察に知られてしまっている恐れがある為だ。君たちが知っているように、ネメス星の入星出星管理は厳しい。面が割れている商人達では今は、出星できないと考えたからだ。君たちはネメス星人に変装し、このテラの小型船を、ネメスでよく使われている、宇宙連邦軍払い下げの中古品にカモフラージュして乗り込んでもらう。ネメス星への侵入予定は、4日後だ。第9宇宙ステーションを出航した後は、このテラはネメス星のセンサー範囲ギリギリまで行き、君たち二人を送っていく。商業ルートを少しはずれたところで、君たちの小型船はテラから出て、商業ルートに乗って、ネメス星のセンサーに入り、ネメスの宇宙ステーションに着艦してもらう。
さて、君たちは商人だから、積み荷を載せていってもらうが、ここのテラの倉庫に置いてある、払い下げに回される予定だった、備品を積んで行ってもらうことにする。払い下げ証明書はすぐ用意する。本部に先ほど備品のリストを連絡したから、すぐに証明書を作成して送ってくるだろう。君たちは、荷物を持ってネメスの地上へ降りて、そのあとは、ヤデンが隠れている荷物を受け取って帰ってきてもらう。テラは君たちを同じ位置で待っている」
「はい」
「この計画の大筋は、ネメスの反体制派が立てたものだが、更に詳細は、第9宇宙ステーションで、反体制派から受け取ることになっている」
「今説明できることは以上だが、何か質問は?」
「ありません」
「ありません」
「では、また呼び出すから、今は勤務に戻ってよい」
「了解しました」
「了解しました」
この後、勤務が終わると、ネドは左前腕を使って、ケネス星へ戻った。
この救出作戦の開始まで、あと4日である。それでも、やきもきしている反体制派からみれば、遅いくらいであろう。しかし、どれ程の準備をすればよいのか。また、できるのか。ネドは困惑した。
まず、ネメス語だ。しかし、宇宙連邦軍の8割が地球人で占められているのに、地球人が全く選ばれずに、相棒がミランとは。
この計画は非常に危険だ。もし僕らが捕まった時、宇宙連邦軍は僕らを助けることを考えてくれるのだろうか。それに僕らは、捕まっても、宇宙連邦軍の任務で来たことを、僕らからは言えないだろう。ヤデンの考えに賛同して加わった、で通すしかないであろう。
僕はミランのことを想った。僕らは、死ねない。
宇宙連邦軍は軍人の命を大切にしない。
もう、この4年の勤務で、わかりすぎるくらい、わかっている。救出に失敗して僕らが死亡しても、僕らの名前が今年の宇宙連邦軍の死亡者のリストに、ただ加えられて配信されるだけである。