デルタ星が、もう、間近に迫っていた。手前に銀色の宇宙ステーションが浮かんでいる。
このサイズの宇宙基地では、テラのような大型宇宙艦は着艦できない。もう、10年もすれば、大きな宇宙ステーションが置かれるようになるのだろうが。
「減速」
「減速しました」
「まもなく、予定周回軌道に到達します」
「方向転換」
「方向転換しました。軌道に入ります」
「軌道に乗りました」
「わかった」
キャプテン、ファウルの声が響いた。
耳で情報を取りながら、操作パネルを見つめて仕事に没頭していたネドは、ようやく顔を上げた。
テラのコントロールルームの正面大窓から見えたデルタ星は、なるほど、地球によく似ている。海は青い。
ネドは、今回のデルタ星の調査の件では、他の士官とともに調査の手伝いと警備を命じられていた。
コントロールルームで緊張した面持ちで、自分の操作パネルを見つめていたバラン副長が、立ち上がって手元のスイッチをオンにした。
「副長バランだ。小型船へ乗船するものは、格納庫脇へ集合するように」
地上の任務の指揮にあたるバラン副長の声が、コントロールルームと艦内に響いた。
「キャプテン、それでは、格納庫のほうで、準備に入ります」
「うむ、バラン、頼む」
バラン副長が、コントロールルームを見回し、
「地上任務に就くものは、行くぞ。格納庫だ」
士官たちに声をかけた。
ネドも他の士官たちとともに、高速エレベーターに乗って、コントロールルームを降り、1階の格納庫へ向かった。
テラの小型船が地上と何回か往復し、士官たちと、地球から乗船してきた地球の大学の学者チームを、調査拠点となる地上のポイントに下ろし終えたのは、小型船の往復が開始されてから1時間後であった。
この星デルタの大学の学者チームは、先に到着し、ポイント近くの草原に立って、テラの小型船の行き来を眺めているようだった。
この付近を流れる川の調査に入る班、赤外線で生き物が固まっているとみられている地域の調査に入る班、洞窟があるとみられている場所の調査に入る班など、あらかじめの計画通りに分かれて、それぞれが3隻のテラの小型船に乗り込み、今度は、調査地点までの小型船の往復が始まった。この地域は、道路は、住民が住んでいる場所しか作られておらず、したがって移動手段は小型船しかないのであった。