全ての星人が星人として生きていく基本がわかって大人になっている。
だから、僕らは自分も大切にするし、他人も大切にする。人の嫌がることを言わないし、しない。犯罪者が出ることはない。僕らは、星人としての生きていく基礎固めをしたからね。他星人はバラバラだ。そして、僕らは、自分も含めた100%の人々の幸せを考えて生きていくという、理念を持っている。全ての星人は、この考え方が身についている」
「ええ。僕はケネスのこの考え方が他星でも同じだと思っていた。でも、違っていた。子供のころ、ラムダ星の学校に通わされた時、それが違うとわかってはいたけれど、今回、改めて他星人の中に身をおいて、ひどいと驚いています」
「驚くよねえ。そして、嫌いになるよねえ。でも、僕らはね、さっき言ったけど、人を嫌わない努力を、そして、嫌なことをされても忘れてあげる努力をし続けている。だって誰でも人に嫌われるのは嫌でしょ。心が寂しいでしょ。そして何より、僕らが考えているのは、僕ら自身が、後から悪かったなあと後悔するようなことをしでかしながら生きてきているとわかっているんだ。相手にとって100%良い人で生きて行くのは難しいと分かっているんだ。嫌わないであげてくれないかなあ」
「嫌わない、そして忘れてあげる努力、そして聞き流してあげる努力か・・。努力ね。・・参考にしてみます」
「やってみて。彼らと付き合うには、必要だよ。でなければ、僕らにとってもね、僕らケネス星人が完全に孤立してしまうことになる」
「ええ」
気が付くと、ケネスのハーブの匂いがしている。
「諸君、食事の時間だよ!」
奥のキッチンからマシアスの弾んだ声がした。
数日後、ケネス星の星立図書館の立体シュミレーションルームにネドの姿があった。
シュミレーションルームの中は、宇宙連邦軍宇宙艦テラの船内の設定になっている。
一人の地球人の乗員が飲み物を手に、休憩室の窓辺に立っている。
ネドはゆっくりとその男に近づき、声をかけた。微笑みながら。
第2章(心浮きたつ任務)
息苦しい。
気が付くと、銀色の壁に囲まれている。壁を叩こうとしたが、腕が上がらない。動かない。
どうにかしなければ。どうにか。
そこで、はっとしてネド(僕)は眠りから覚めた。
見慣れたテラの自分の部屋の天井である。
まただ。またあの夢を見た。あれ以来、繰り返し見ている夢だ。
じっとり汗をかいている。
時間を見ると、もう、すでにいつもの起床時間を過ぎている。