着船している船は、じゃばらのチューブでこの船の通路と繋がっている。
なるほど、この形式か。
ネドは部下達を先導して、格納庫脇の通路を進んだ。格納庫の右端に着船しているギーアの小型船の脇の位置まで来ると、左に曲がってチューブの中に入り、この小型船の扉まで到達した。
手動で扉を開けてギーアの小型船に全員乗り込んだ。
そのころ、ドアの破壊に成功したギーアの乗組員たちが続々とコントロールルームに向かっていた。
ケネス宇宙軍本部の士官が、このことをサライ最高司令官に声を上げて、次々に報告した。
その報告の声は、緊急通信を使って全てのケネス艦に流されていった。
ネドは小型船に入ると、
「席に着いて 掴まれ!」
と声を上げ、すぐに操縦席に行き、操縦桿と操作パネルをじっと見た。
ケネスのSEが操縦のフォローに入っているはずだ。
パネルに手を伸ばすと、触る前に、ある場所が自動的にグリーンに光った。
ネドは頷くと、操縦桿を右に切って動かし、ギーア方式の、扉がない格納庫の出口へ向かった。右の外壁が一部無いかたちで、キラキラ渦巻くワームホールの光がそのまま見えている。
小型船が動くと、チューブは自動で外れて縮まった。
小型船はギーア船の格納庫を出て、外のワームホールの中へ飛び出した。
ケネス艦ギガのキャプテン、キースはギーアの小型船が、ギーアの中型船の格納庫を出たのを確認すると、まず、この小型船に、ギガから偏光スクリーンと防御スクリーンを張らせた。
そしてすぐに、キースはシリス副長率いる救出部隊全員をギガに転送収容させたのだった。
今まさに、コントロールルームの外で見張りをしていたギガの救出部隊の士官2名とギーア星人たちとの間で銃撃戦が始まろうとしていたところであった。
ケネス艦ギガは自船を透明スクリーンで隠しながら、ネドの小型船の前をワームホールの惑星X側へと進んでいった。
ギガとギーアの小型船がワームホールを出ると、サライ最高司令官は、惑星X側に静止させている宇宙基地からシールドを出させて、ワームホールの惑星X側の口を塞いだ。
時を同じくして、ワームホール内のケネス大型艦ミッドは、サライ最高司令官の指示で、自船に再び透明スクリーンを張り、ギーアの中型船を牽引ビームでひっぱって、ギーア側の口からワームホールを出たのだった。
サライ最高司令官は、ワームホールの口を塞ぐために張っていたスクリーンを一旦切らせて、わが艦ミッドとギーアの中型船を通し、そして、再度ギーア側の宇宙基地からスクリーンを張って、ワームホールのギーア側も封じたのだった。
すぐにケネス宇宙軍本部にミッドのキャプテンから、ギーアの中型船をギーアの宇宙基地の近くで解放した、これから帰還すると報告が入った。
さて、ケネス宇宙艦ギガの格納庫にある、ネドの乗ってきたテラの小型船は、サライ最高司令官の指示で、ギガの格納庫から惑星Xの元の着陸地点へとケネス宇宙軍本部の転送機を使って元に戻していた。
短時間で非常に冴えた指示ぶりである。
サライ最高司令官の脇で、状況を静かに聞いていたラムル総統は、脇のサライ最高司令官に向くとまず声をかけた。
「みごとだった最高司令官、そして、本部の諸君、ギガおよびミッドの諸君、みんなもみごとだった。ごくろうだった。ありがとう」
と、オンになっている緊急通信を使って、関わった全ての士官の労をねぎらったのだった。