一人で窓側の席で食べようかとトレイを持って立っていると、それぞれのグループから、こちらへどうぞ、とか、良かったら一緒に食べない、とか声が上がった。
近い席へ座ってみると、なんとみんなが集まってきた。
その定食はおいしいよとか、まずいのもあるから、気を付けてとか、乗務員宿舎へは行ったのかとか、朝はこの3階にあるジムへ行くといいよ、爽快だよ、とか、笑顔で話しかけてくる。
ああ、そう言えばこのギガの乗務員宿舎はどんな感じなんだろう。
ネドはギガには以前に何度も乗ったことはあるけれど、ゲストルームばかりで、乗務員宿舎は今回初めてだ。
ニコニコしながら話しかけてくるケネス宇宙軍の乗員に囲まれて、ネドはいきなり沢山の仲間ができたような温かい気持ちになった。
そう、ここはケネスである。
コントロールルームに戻って勤務時間が終わって、教えられていた自分の部屋へ興味津々で行ってみると、狭くはない。テラでの僕の部屋より広いし、デザイン的にもしゃれていて、きれいに造られている。
ケネスだなあ。
窓のそばのリクライニングソファに寝そべって、窓から外の星を眺めてみる。
うーん、心地よさに、眠ってしまいそうである。
しばらく寝そべって、夜はバーもあるよと教えられたけれど明日にするかな、などと思いながら立ち上がって、ノードが荷物に入れてくれた寝間着に着替えて、その日は早々に横になった。
それからの日常は、何でも教えてくれる仲間の中に入ったようである。
仕事を覚えるぞ、と自分的にはリキが入っているのだが、周りの当たりは柔らかく、実に心地よい世界である。ケネスである。
さて、ネドにはキャプテン、キースから、今回のミュール星訪問に際して、勉強のため、共に降りるようにと話があった。
ドキドキだ。
さて、ミュール星に近づいてきた。
ネドにも、周りにも、緊張感が漂ってきた。
ミュールのセンサー域に入る前に、この宇宙艦ギガは大きく方向を変えて、直線でケネス星の位置が悟られないように船を迂回させた。これは、ケネス宇宙軍のマニュアルである。
ケネス星では、このような宇宙へ進出して間もない星を訪問する際は、事前準備は十分に行われている。宇宙基地から得られる情報で、言語の理解はもとより、典型的な日常生活、文化、星人の性向、政治、組織形態、軍事力、科学技術のレベルなど多岐にわたる情報を分析して理解した上で、その星の言語で自己紹介および訪問したいとの意向、訪問目的等のメッセージ通信をあらかじめ送ってから訪問している。