「行き先は?」
「107です。第107宇宙基地です」
士官が応えるのと同時に後ろのドクター、マシアスが声を上げた。
「副長、ネドがシールドを下げて外気に触れた。私は行きます」
マシアスはそう言うと、左前腕を触って、
「ネドの元へ」
と命じた。すぐにマシアスの周りがキラキラ光った。
戦闘態勢コードAのため、このギガにもたらされる通信は全て、本部にも他のケネス宇宙艦にも共有して流れている。
ついに本部のサライ最高司令官が動いた。
「シリス副長、キャプテン、キースはこちらで第107宇宙基地に転送する。ギガも107宇宙基地に引き上げてくれ」
「了解しました。サライ最高司令官」
ギガの副長シリスは振り返って、右手の士官に指示をした。
「牽引ビームで地上の小型船を補足してくれ。この船に収容次第、第107基地に引き上げる」
「了解」
「小型船補足」
「小型船を上昇させます」
「小型船大気圏に突入」
「やつらにぶつけるな」
「了解」
上陸チームが着陸させた小型船がゆっくりと、このギガの格納庫に収容された。
「収容完了」
「方向転換」
「方向転換開始」
「やつらにぶつけないようにしろ。進路は109基地に向けて、低速で発進だ」
「了解」
ケネス艦のにわかな動きに驚いたのか、ギガを取り囲んでいたミュール船3隻から、ややあって、ギガに向けて先ほどのクラシックな砲撃が再開された。
ケネス艦ギガは全く攻撃に動じることなく、第107宇宙基地とはやや離れた第109基地方向に、ゆっくりと動き出した。
ケネス軍のマニュアル道理、直線で目的地が悟られないように進路が取られたのである。
さて、この直前のキャプテン、キースはどうなっていたのだろう。
キースの顔面はもう、血まみれであった。
「アトスにお前の船を着陸させろと言っているんだ」
キースはそろそろいいだろうと思っていた。