うわさとなった呪術者は、この村で代々呪術を行っているとのことであった。
この人物は家系的に人の意識を読む能力にたけていて、そして、うわさでは恨みの対象となった者を、懲らしめることができるとのことだった。
これで本業の農業の他に、実入りのいい副収入を得ているとの、もっぱらの噂であった。
軍の調査の人間が来たことで、この呪術者は青くなっていた。
この呪術者は、見た感じはどこにでもいそうな壮年の男で、妻と子供がいる。
ハボス星人としては、小柄な方だ。そして色も白い方だ。
実は、軍の調査の人間は、この呪術者にとっては有難くない情報を握っていた。
少し前に、ある軍の関係者にとても嫌な思いをさせられたある女性から頼まれて、この呪術者は、この軍の関係者を懲らしめる念を送った。
この軍の関係者は、非常に体調が悪くなり、病院へ行って薬をもらったが良くならない。
仕事にとても行ける状態ではなく、家で床についてしまった。
この男は、女をひどいめに合わせて捨てた後だったので、この女が気になり、やっとの思いで外にでると、この女の元を訪ね、そして女を問い詰めたのだった。
そして、すべてが明るみに出たのだった。
彼という呪術者の存在、そして呪術を掛けた方法も。
軍の中で話が広がった為、ハボス軍は、この呪術者は軍として使い道がありそうだと考えたのだ。
軍の調査員たちは、この呪術者を脅して、呪術をかけるときに使ったという機械のありかをはかせた。
そしてついに、軍は、小屋のようなこの呪術者の家の裏側に、草木でカモフラージュされた薄汚れた機械を見つけたのだった。
磨いているところを見つかることを恐れたのだろう、ひどく汚れがこびりついていて、見るからに古そうな機械であった。
機械は、軍の車でこの呪術者とともに軍の研究所に運ばれた。
この呪術者の妻子も、この呪術者の目の前で軍に捕らえられて、脅しの為に別の場所に連れていかれた。
この薄汚れた機械は、研究所で汚れをきれいに落とされた。
その機械の表面に書かれていた文字が浮かび上がった。
軍関係者たちは驚愕の表情となった。
浮かび上がった文字は、ケネス文字だったのである。
軍は、徹底的にこの呪術者を問い詰めた。
代々他言無用の掟があったために抵抗していた呪術者も、妻子の身の安全が脅かされるとの脅しを受けては、秘密を明かすしかなかった。