「ただいま帰りました」
「お帰り、ネド」
上背があって、厳かな雰囲気の細身の老人は、すでに書斎机のイスから立ち上がっていて、ネドに手を広げて近よると、ネドをぎゅっと抱きしめた。
「元気だったかい?」
「はい」
「疲れていないか?」
「いいえ、大丈夫です」
「食事はまだだろう?」
「はい、まだです」
祖父はさあさあとネドを隣の祖父の居間へ招き入れた。
執務室の隣が祖父の家であり、ネドが大きくなるまで育った家である。
先に祖父の家に入っていたノードが、さっそくネドの大好きな料理を運んできた。
ネドは、テラでの出来事や宇宙船での生活を祖父とノードにたっぷりと話した。陽が落ちて、祖父の家の窓から見える外の庭には、スポットライトが灯った。ライトが庭の花を美しく浮かび上がらせている。
ネドは泊まっていかないかと誘う祖父に、明日も来ますよと笑顔で応えて、祖父の家を辞した。
一人で帰ると言ったのに、ノードは一緒にネドの家へ戻ると、ネドの寝間着を出して、満足げに寝室をみまわしてから、お休みなさいと言って帰って行った。
さて、まだ、寝るには早い時間である。ネドは書斎机の上を触って、机に半透明のコンピューターを出して、宇宙連邦軍の宿舎となっているホテルに、さっそく連絡を取って、ミランを飲みに誘った。宿舎のホテルのすぐ近くの、大きなバーで待ち合わせて、ネドは高速平面移動ボックスでホテルの近くまで行った。
ゲートを抜けて非制限区域内へ入る。ここは繁華街である。どこの店もまだ開いていて、他星人とケネス星人の両方がたくさん出歩いていた。待ち合わせたバーに入ると、カウンター席に、ミランの紫色の髪を見つけた。
「お待たせ、ミラン」
「ネド少尉、僕も今来たところですよ」
「そうか、良かった。ミラン、何を飲んでいるの?」
「ニークです」
「僕はどうしようかな」
カウンターの中のバーテンダーに注文をして、左手首の宇宙連邦軍の認証カードを器械にかざして支払うと、ネドはゆっくりとイスに腰をかけた。