宇宙連邦軍宇宙艦テラが、ベーター星の周回軌道に入った。
上陸メンバーはテラの小型船に乗って、目標パラスの隣国キッタリアの町、タパの郊外に、夜、着陸した。(宇宙連邦軍には転送技術は無い。ケネス星と他星との科学技術は、およそ1000年の開きがある)
パラスは小高い山を越えた盆地にある。ルワ(地球の馬のようなもの)に乗っていかなければ怪しまれる。
この隣国は交易が盛んで、あちこちに大きな市場がある。 隣国から入るのは、このタパという町の大きな市場で、ルワという動物を買い付けるためである。
このタパはこの大きい市場のおかげで旅の商人の出入りも多い。紛れやすい。
上陸班は、小型船をこのタパの郊外の森の中に着陸させた。
小型船の中で夜を明かし、あたりが明るくなると、上陸班は懐に金(きん)の小粒の入った布袋を入れ、脇に水袋を下げて、徒歩で市場に向かった。
この隣国は、気候は比較的温暖で畑があり、郊外では牧畜も盛んだ。
旅人の姿がちらほら見えてきた。色は違うが似た感じの布の簡単な衣服をまとっている。
町に入ると、中央に市場があり、たくさんの人々でにぎわっていた。
騒がしい。
商人たちが、店の主人と話をしている。
ネドは会話を駆使して、ルワを売っている店を聞いた。そして、一応、ヌコは売っていないかと聞いてみたが、やはり、売ってはいない。
ネドは副長に報告して、四人でルワを売っている店に行き、ルワを買い、ルワの手綱を引きながら市場を抜けて街道に出ると、ルワに乗って、小型船に戻った。
ルワはおとなしい動物である。助かった!
ルワに食料の入った布袋と、パラスの王様に渡す贈り物の布袋も背おわせた。
副長の合図で、国境の山までルワを走らせる。小高い山の上から盆地のパラスを見下ろすと、なるほど、光景が一変する。
緑が殆ど無い。薄茶の乾いた大地の先に、土色の壁に囲まれたパラスの町が見える。そして、パラスの町の中央に小高く白いお城らしき建物と白い城壁が見える。
山を下りると、暑い。風がない。日差しがきつく感じられる。
ルワを走らせ、四人がこの町の門に着いたときは、すでに夕方であった。
副長に促され、ネドが門番に声をかけた。
お辞儀をして、
「私共は、遠い国クワンから来た商人でございます。クワン王の命により、こちらのパラスの王様に贈り物を持ってまいりました。どうか、お通しください」
ネドがそう言うと、門番は不審げな顔を向けて、じろじろ一行を見ていたが、待っているようにと言って姿を消した。
やがて入ることが許され、町の中へ入ると、人通りが少ない。
町の大きな通りが、中央の丘の上の白いお城へ続いている。
夕方である。宿を早く探さないと。