思わず苦笑いが出たが、真顔に戻し、キャプテンの執務室に入った。
「ネド少尉、ただいま出頭しました」
と、気おつけの姿勢で言うと、
「説明するから、座って」
と、キャプテン、キースは相好を崩してイスから立ち上がった。
説明された今回の任務は、このケネスからかなり東へ行った所にある、宇宙連邦には知られていない星、ミュールという惑星を、初めて訪問するというものであった。
このミュールは、まだ宇宙に進出して間もない星で、初期の宇宙船で自星とその衛星との間の往復をしているという段階であった。
ケネスではこの宇宙内に沢山の大小の宇宙基地を置いているが、その情報によると、このミュール星の衛星には、宇宙連邦内には比較的少なく、かつ重要なある鉱石が産出していることがわかっていた。
ミュール星でその鉱石を買い付け、科学技術の流出と言われない程度の器械や産物を物々交換するという商取引目的のため、今回はその下準備をするというものであった。
宇宙連邦軍では、宇宙連邦にすでに加盟している星への訪問か、無人の惑星、衛星の調査が主な任務となっている。パラスの時のようなことは、本当にめったにない任務だったのだ。
ケネス宇宙軍はというと、商取引の補助的任務が主となっている。
今回の訪問に際して、商務省から副長官のルコが乗船することになっていた。
キャプテン、キースに大まかな任務の説明を聞いた後、キャプテンに連れられて、コントロールルームにネドが顔を出すと、みんなが拍手と笑顔で迎えてくれた。
シリス副長がネドに気が付くと、立って脇の壁を押した。開いた棚の上から小さい器械を取ると、ネドに笑顔で近づいた。ネドのカバンを預かると、その小さい器械をネドのカバンの上に置いた。ネド少尉の部屋へ、と副長が小声で言うと、カバンは浮き上がって、後方のエレベーターまで行き、シュッとドアが開くとそのまま中に消えた。
シリスはネドを自分の脇の席に座らせた。
副長からコントロールルームでの仕事を教わる。
うーん、まあ何とかなりそうだ。
商務省の副長官が、このギガのゲストルームに入ったようだ。
コントロールルーム内に報告が入る。
さあ、出発である。
ケネス星宇宙ステーションに、出航の合図を送って、ギガはゆっくりと宇宙ステーションを離れて、東へ向かった。
この宇宙艦ギガで現地到着は1週間後となる。ケネス宇宙艦は、他星の宇宙艦や宇宙基地や他星のセンサーの範囲内では低速を基本としているが、本来は驚くほどの速度が出る。科学技術の差である。
この船で1週間とは、かなりな距離である。
初日は仕事を必死で覚えていて、あっという間に食事の時間となった。
食事は交代制である。シリス副長に、お先にどうぞと言われて、下の階の食堂に行くと、30人ほどの乗員が、グループを作りながら食事を取っていた。
ケネスの宇宙艦では、食事は全て合成調理器である。
合成調理器自体は、ケネスのネドの家にもあるのだが、定食メニューは断然、ここの方が 豊富である。