脇で聞いていたミッドのキャプテン、シュメルは、
「わがケネス艦の位置を正面スクリーンに出してくれ。わがミッドとギガを中心にして、出してくれ」
と、すぐにコントロールルームの士官に声をかけた。
正面スクリーンに、現在のこの宇宙域とテラ脇にいるギガを中心としたケネス艦の位置すべてが浮かび上がった。
サライはじっとそれを見ると緊急通信を使って、すぐに指示を出した。
サライの指示通りに新たにケネス艦3隻が、宇宙連邦軍宇宙艦テラの周りに投入された。透明スクリーンを張ってすでにテラ脇に停泊しているギガと、合わせて4隻が、透明スクリーンを張った状態で、テラの周りを囲んだ。そして、すぐにセンサーの解析に入った。
訓練のたまものである。技術者総出で分析が行われた。
やがて、
「サライ最高司令官、発信源がわかりました」
「どこだ、ユメル大尉」
「移動しています。テラに近づいています。船が・・特定できました。ハ、ハボス艦です」
「会議出席者を乗せている船か、わかるか?」
「その船です。公式に出発していますから。座標が同じです」
ミッドのコントロールルームの別の士官が応えた。
「わかった」
サライは深いため息をついた。
なんなんだ。
「ハボス艦の中の誰から発信されているか、つきとめてくれないか」
「了解・・でも、さ、最高司令官?」
ユメル大尉は困惑して言った。
「なんだね、ユメル大尉」
「ハボス艦の中の精神波発信源を特定するのでしたら、ハボス艦に近づいた方が」
「わかった、そうだな」
サライは、透明スクリーンをかけてテラの周りを囲んでセンサーで分析をしていたケネス艦のうち、1隻を、会議のための代表者を乗せているハボス艦に向かわせた。その方がこのミッドよりハボス艦に近い。
サライがこう指示を出した直後、ミッドのコントロールルームで別の士官が声を上げた。
「キャプテン、ハボスの動きが変です。ハボス艦3隻が、方向転換してこちらに近づいてきています。まだ、この距離ですとテラに向けているのか、このミッドに向けているのかはわかりませんが」
ミッドのコントロールルームの中が、一気に凍った。
「わかった」
ミッドのキャプテン、シュメルはこう応えると、隣のサライ最高司令官に気を使って目線をサライに向けた。
「コードAにして、正面スクリーンに、この付近の宇宙域にいる船、全ての船の位置と所属を出してくれないか。通常より範囲を広げてくれ・・下の部分でいい」
サライはすぐに指示を出した。
「了解」
応えるコントロールルームの士官の声とほぼ同時に、ミッドの正面スクリーンの中央下に、この宇宙域付近のすべての船の位置が浮かび上がった。船の位置脇には、所属星名と進行方向が付されている。
なるほど今はおかしな動きをしているというのは、あのハボス艦3隻だけだな。まだ距離はある。
サライは正面スクリーンを見ていたが、すぐにイスの右脇のパネルを触った。
「キャプテン、キース。ネドはどうなっているのか教えてくれないか」
と、ケネス宇宙軍ギガのキャプテン、キースに呼びかけた。
「サライ最高司令官。ちょっと待ってください・・・・・失礼しました。マシアスによりますと、ネド中尉は疲労が蓄積しています。それもひどく。しかし、勤務は続けているようです。それから、ドクター、ネプスの方は、・・・ネプスは、確認したいので分析結果をまだお話できないと言っています」
「わかった。ネプスに言ってくれないか。Fコードを強化して張るかもしれないと」