やっとハボスの小型船がテラの格納庫へ着船した。
会議は、大幅に遅れてテラの会議室で始まった。
ケネス側は大きな経済援助と引き換えに、以前から伝えてあった、ある条件を提示した。
麻薬の輸出の禁止と、最近富みに活発化している海賊船に対し、ハボス星側からも船を出して、取り締まりを強化していただきたいとの内容であった。
それに対しハボス側は、ケネス側はいわれなき中傷をハボスに浴びせている、と非難を始めた。
そして、経済援助の中にハボスで産するさまざまな農作物、工業製品を他星で売れるようにする手助けを加えてほしいとの事だった。
ケネス星から言わせれば、ハボスの農作物は自星で賄う量しか産生していないし、工業製品は粗悪で、他星が見向きもしないあり様である。
会議は、もともと大幅に遅れて始まったためと、紛糾してしまったために、すぐに翌日に持ち越しとなり、中止された。テラの中では、もう夕方の時間帯となっていた。
ハボス星側も、ケネス星側も、テラのゲストルームに一泊することになった。
会議が変な時間に始まったために、昼食も取ってはいない。
テラ側が、乗務員食堂ですが、どうぞご自由にお使いくださいと、申し出た。
サライ最高司令官と補佐官、秘書官は、このテラの食堂で、ひどく遅い昼食を取った。
乗務員食堂のこの時間の利用者は、ほぼいない。
ケネス側3人のうち、サライは食事を前にしても食欲が沸かず、食堂のイスにふかぶかと寄りかかり、窓の外の宇宙を見ていた。
補佐官、秘書官はこの食堂の食事に対し、他星との比較談義を始めた。
サライは、ぼんやりと二人の会話を聞いていた。
が、いきなり3人は固まった。
一人の人物が食堂の入り口に速足で近寄って来た。そして壁に身を隠しながら、食堂の中を見回している。もう、乗務員食堂の中は、サライたち以外はいなくなっていた。
その人物は、素早い身のこなしで、肩から下げていたバッグからハボスの銃を取り出し、サライに向けて構えた。
この人物の背後から、この人物に駆け寄ったケネス星人がいた。
ネドである。
ネドは、このハボス星人が銃を構えようとした瞬間、この男を突き飛ばした。
突き飛ばされたハボス星人は、銃を持ったまま転がりながら、背後にいた人物を視認した途端、身体を捻って銃をネドに向けて発射した。
シュッ
宇宙連邦軍宇宙艦内では、銃の携行が許されているのは、安全管理部門だけである。ネドは銃を持ってはいない。
ネドは壁に身を隠そうと瞬時に身体を移動させたのだが、間に合わず、左肩をハボスの強力な銃に撃たれて、気を失った。
銃を発射したハボス星人は、さらに転がり、銃を今度は、奥のテーブルに身を隠していたサライに向けて発射した。