「ご心配にはおよびません。食堂は閉鎖しました」
「そうですか」
「ところで、恐縮ですが、このテラは修理の為、すぐに近くの宇宙ステーションに行かなくてはならなくなりました」
「なるほど。ですと、我々はすぐ、ここを離れた方が良いということですね」
「はい。申し訳ありませんが」
「いえいえ」
「実は、ハボス星の方々は、もう、自船に引き上げられました」
「ああ、そうですか。わかりました。我々もすぐに引き上げます」
「恐れいります」
「ああ、ところでキャプテン。お忙しいでしょうから、お見送りは結構ですよ」
「わかりました。恐縮です」
補佐官、秘書官、サライ最高司令官はミッドの小型船に乗り込んだ。
(こういう場合、通常、操舵士官はこの小型船内に泊まり込んでいる)
格納庫を小型船が出ると、サライは小型船窓から外の宇宙を見ながら、すぐに左前腕を触り、ミッドのキャプテン、シュメルを呼んだ。ミッドの船体で、ハボス艦が良く見えない。
「シュメル、ハボスはどうなっている?」
「先ほど、4隻ともここを離れました。速度を上げてハボス星に向かっています」
「わかった」
サライはミッドのコントロールルームのキャプテン席隣の補助席に戻ると、すぐパネルを触った。そして、緊急通信で、ケネス宇宙軍全軍に声をかけた。
「ハボスは引き上げた。我々も引き上げよう。一旦、コードAは解除する。しかし、油断はしないでくれ。だが、交代で休んでくれ。諸君、お疲れ様だった、協力ありがとう」
だが今、コントロールルームの乗員たち、そしてキャプテン、シュメルからも、サライは強く熱い感情を感じている。
それが何なのかは、サライは当然わかっていた。なぜなら、自分も同じ気持ちだったからである。