車の助手席から窓の外を見ていると、傾いた陽が、街を赤く染めだしたのがわかる。
街路樹の間のところどころに間隔を空けて置かれた明かりが、道路脇の木々と下の花を優しく照らしている。
植物や街路樹を傷めないように、それでいて車や歩道を歩く人に配慮された、優しい光が続いている。
赤く染められた家並みは、どこの家もきれいで、そして、道路からも、その家の庭のスポットライトが点灯したのが、優しく光って見えている。
美しい街だと、あらためてネドは思った。
それを見ていて、ネドは胸に詰まるものがあった。
「ネド、大丈夫かい?」
フェレルが優しく聞いた。
「ええ、大丈夫です。・・あのー、お店に着いたら、僕は聞いてほしいことがあるんです」
「え、ああ、喜んでお相手しよう。なんでもどうぞ。あのね、ネド。ゆっくりでいいからね」
やがて、明かりの灯ったレストランの店の前に車が着いた。
扉を開けてレストランの中に入ると、ほぼ前のままだ。
相変わらず混んでいる。
フェレルが気を利かしてくれたのか、店の主が気を利かせたのか、前に座ったことのある席に着いた。
周りの、談笑しているケネス星人をみながら、思う。平和だ。街は全て平和だ。悪人はいない。
ケネス星人は、外で食事をしたり、コンサートへ行ったり、楽しむことが好きな星人だ。
穏やかで、楽しい日々が変わらず続いている。そして続いて行く。ずっと。それがケネス星だ。
間も無く、ネドの好きなふるさとの味が何品も運ばれてきた。良いにおいがしている。
ネドはケネス星を出てから見た他星を思い浮かべていた。