ノードは、正面扉脇の壁のくぼみにある小さい器械をつまんで、ネドの大きい荷物に付けた。
二人で立っているとまもなく、チューブの扉が開いた。
シュッ
移動ボックスに二人が乗り込むと、荷物は浮かび上がって二人の後から移動ボックスに入った。
シュッ
「先にご自宅に戻られますか?」
「うん」
「自宅へ」
そうノードが空間に言うと、高速平面移動ボックスは、滑らかに動き出した。
ケネス星人の家は、この移動ボックスのチューブに沿って造られているものと、独立して建っているものとがある。
ネドの家はこのチューブに沿って建てられている。
ボックスが静かに止まった。
通路へ出ると、正面の通路の壁が左右にシュッと開いて白い内部通路が現れた。二人が通路へ入って少し歩いていくと、右壁がシュッと開いて、我が家の居間が現れた。
自動認証である。
中に入ると、居間の中は二年前に出てきた時のままである。
生成りの大きい、座り心地の良いソファ、書斎机、奥のキッチン、左手の床までの大きい窓、窓を通して花の咲いている庭が見える。
庭にはケネスの柔らかい陽が注いでいて、色とりどりの花をキラキラと光らせている。
「元のままでございましょう」
ぼーっと見ている僕に、ノードがちょっと自慢気にそう言った。
「ああ、そのままだね。ありがとう」
ノードが出してくれた服に着替えると、
「おじいさまのところへいかれますか?お待ちかねですよ」
ノードがほほえんだ。
二人で居間を出て内部通路を歩くと、まもなく左手の壁が左右に開いて、建物内の通路が現れた。通路の中へ入って少し歩くと、左手に大きな扉が現れた。
扉はシュッと左右に開いて、執務室の受付の部屋が現れた。
「おかえりなさい」
入って正面のデスクで仕事をしていた女性秘書が目を上げてにっこりほほ笑んだ。
「やあ、アリス」
秘書がパネルを触って、祖父に連絡を取ろうとしたが、パネルを触る前に右手奥の扉がすぐにシュッと開いた。
「おかえり、ネド」
部屋の中から祖父の低い声が響いた。祖父はこのケネス星の総統である。このことは宇宙連邦軍には秘密となっている。
秘書の苦笑いに、苦笑で応えて、ネドは中へ入った。
ケネス星人は人の心が読めるという特殊能力を持っている。