次々開けさせられる。
ネドは、検査は終わったという念を、その検査員に送った。
ネドの目の色が変化した。
計画では、反体制派の検査員が検査するとのことであったが、この時間では、無理だろう。待つのが当たり前だが、この際、そんなことは言っていられない。なぜか不安が募ってくる。何かがネドに急げと言ってくる。
急ぎたい。急がなければ。
検査は無事終了した。
ネドが、ほっとしたのもつかの間、別の係員が、出星計画書の時刻から見ると、随分早いねと、ネドに聞いてきた。
ネドは顔色を変えずに、荷物を船に積んでから、このステーションの中で、ゆっくりしようと思いましてね。この荷物を持っていては、ゆっくりできませんからねと、いかにも世慣れた商人のように返答したのだった。
荷物をテラの小型船へ押していく。
小型船へ荷物を入れて、二人は出星の時刻まで待つことにした。
何も食べてはいないが、小型船を出て、宇宙ステーション内で食べる気には到底なれない。
ただ、口の中が、ねばついてきた。ミランもそうだろう。
ネドは立ち上がると、小型船の奥へ行き、非常用の飲み物を棚から取った。2本取ると、ミランに一本を手渡した。
「ミラン、気をもんでも仕方がない」
二人で飲み物を口にした。
ヤデンはおそらく、酸素発生装置を口にくわえているのだろうが、まだ、外に出すわけにはいかない。
時間よ、早く過ぎてくれ。
この時、ネメス星の地上では、一つの問題が持ち上がっていた。
ネドの成りすました名前の商人たちは、予定より早く取引が終わり、地方から中央へ、自分の小型船で移動していた。
地方の産物の買い付けが終わって、ネドが泊まった商人の定宿へ、物々交換をしに向かっていたのである。
反体制派の商人達の名前を使うことはできなかったのであろうが、なんともずさんな計画である。
ネド達の小型船の中は、ヴィードの甘い香りが漂っていた。
ネドたちは、テラの小型船の中で、何も口にせず、ただひたすら、出航時刻になるのを待っていた。
やがて、やっと時間となった。
小型船内の通信機に、係官のネメス語が響いた。
ネドは指示通りに小型船を動かし、ネメス星宇宙ステーションの格納庫から宇宙へと飛び出した。
ネドとミランに安堵感が広がった。
出航して少し経ってから、ネドは自動操縦に切り替えて、ミランと荷物を開けて行った。