ケネス星の皆様。皆様方が、もう嫌気がさしているというお気持ちはわかります。僕も、支援をお願いし続けることに、心苦しい思いでいます。ただ、僕は、それを踏まえて、こう思うのです。死者が出れば、嘆く人間を生みます。肉親を亡くすことが、そして親しい友をなくすことが、どれほどの悲しみを、残されたものにもたらすか、それを僕は、しかたのないこととして受け入れることはできないのです。私は、このケネスの、ケネス星の歴史上類ない事件の生き残りとして、ケネス星の皆様に、なんとか僕と同じ思いに立ってはいただけないかと、お願いしたいのです。嘆く人間を出さない。出したくないという、思いに立ってはいただけないでしょうか。僕としては、この宇宙連邦軍に対する支援に対しては、ケネス星の決定事項としていただいて、支援の方法のみ順次、考えていく、としていただきたいのです」
ネドが語り終えたとき、場内は静まりかえっていた。考えてしまうという雰囲気だった。
沈黙の後、サライ最高司令官が、口を開いた。
「さて、何か意見はないかな。他に発言するものは、いないか?」
サライは、会場の反応をちょっと待ってから、隣の席で黙って話を聞いていたラムル総統に振り返って、
「よろしいでしょうか?」
と気を使った。
ラムルは黙って頷いた。
サライ最高司令官は、会議室を見回し、
「質問がないようなら、支援を続ける、支援をやめる、この点について投票に入ることにしよう」
そう言うと、中継しているカメラに顔を向けて、カメラを通して、ケネス星の人々に合図を送った。
「ケネス星の皆さん、それでは、支援を続けることに賛成か、反対かで、投票に入ってください」
会場の前方の上空に、掲示版が浮かび上がった。
ネドは祈った。
空中に浮かんだ掲示の数字は、高速に変化を続けていたが、やがて、止まった。
結果は賛成多数となった。
そしてサライ最高司令官の声が響いた。
「結果が出ましたね。さて、ケネス星の皆様、結果がでました。賛成多数で、宇宙連邦軍に対する支援は続行することになりました」
「では、諸君、閉会としよう」
「ありがとうございました。ケネス星の皆様、ありがとうございました」
ネドは、思わず立ち上がり、カメラに向かい叫んだ。そして、反対の雰囲気を醸しだしていた会場の人々にさえ、感謝の言葉をかけたのだった。
僕は本当にほっとしていた。が、でも、心はすっきりと晴れはしなかった。
ラムル総統(おじいさん)は立って、ネドに優しい目を向けると、会場を後にした。
その中でサライは、別の考えに捉われていた。
30分、30分、30分
席を立っても、サライの心の中に、この言葉がこだましていた。