ネドはやっと人(黒い布を巻いた服を着ている)を捉まえて、宿を探し当てた。
宿に着いた時には、もう陽が落ちかけていた。
居酒屋の2階が宿になっていると聞いたが、当の居酒屋の中に入ると、ここの主人らしい中年男が我々に不審げな目を向けた。
「こんばんは」
「何かね」
「ここの2階は宿になっていると聞いたが」
「そうだ」
「今晩泊めてもらえないか。四人で一泊だ」
「・・・・」
「我々はここからは遠い国クワンから来た商人だ」
不遜な態度くらいが、怪しまれない。そして、これだ。
「金(かね)は前払いしてもいい。金(きん)で支払うつもりだ」
ネドは懐から布袋を出し、金の小粒を少しぱらっとカウンターにあけてみせた。
男はちらとそれを見て、
「いいだろう。先払いしてもらうよ」
言うなり金の小粒を集めて、仕舞った。
「2階だ。さあ、ついてきな」
「あ、その前にルワに乗ってきたんだ。厩はあるかな」
上陸班は、店の裏にある厩にルワを繋いで、居酒屋の2階に上がり、2部屋に分かれて部屋に入った。
粗末なベッドがある、それだけの狭く、暗い部屋である。
四人は持ってきた食料で食事を取ると、早々に横になった。
不安な夜が明けると、四人は朝食もテラから持ってきたもので済ませ、宿を出てルワをゆっくり歩かせて城へ向かった。
太い通りを抜け、丘を登ると、やがて城壁の白壁に着いた。
「ナイフを置いていくぞ」
副長のバランが振り返って、三人に言った。持ってきたのは、いかにもこの星のものらしいナイフである。
町の門は入れたものの、ナイフでさえ携行しているところを城の人間にみつかれば、やっかいなことになるかもしれない。
道脇のしげみにナイフを隠し、四人は城の門に向かった。不安である。
門に着くと、槍のようなものを持った門番が門の扉の両脇に立っていた。
緊張が高まる。
ネドは少し腰をかがめて、門番に近づいた。
「待て!」
門番が槍をネドの方へ傾けて、大声を出した。
「我々はご覧のとおり旅の商人でございます。遠い国クワンからクワン王の命で、こちらの王様へ贈り物を持ってまいりました。お目通りをお願いします」
ネドは、穏やかな顔を無理に作って、落ち着いた声を出した。