マシアスに別れの片手をあげて、サライは執務室の隣の自宅に帰るべく、自分の執務室に向かった。
自分の執務室は、もう秘書も帰っていて、執務室を通り抜けて、そのまま右隣の自宅に行こうとした時、ふと、サライは、左手の自分の執務室の書斎机に目が行った。
紙が置かれている・・・ようだ。
机に近寄りそれを取り上げると、サライは目に入った文字を見て、愕然として固まった。
その紙には、自分の手書きの字で、
30分
と書かれていたのだ。
その下には、自分の直筆のサインと、印字された文字で未来の日付と非常に細かい時間が記されていた。
30分、30分
消息を絶ってから30分後にネドをここへ戻したのは、やはり自分だったのか。
でもなぜ?
優れたタイムマシンなら、当然、消息を絶った時に戻すことは可能のはずだ。
わざわざ遅らせたのは、なぜなんだ。
サライはしばらく、その場に立ち尽くしていた。
翌日、目覚めたネドに、サライも、ドクター、マシアスも、ラムル総統も、いろいろ質問をしたが、ネドは気を失ってから起こった事を、何一つ覚えてはいなかった。
予想はされたことだが。
未来とはいえ、ケネスが関わったことなら、記憶を消して戻すだろう。
催眠術を利用した逆行療法が一応行われたが、やはり、何の痕跡も残されてはいなかった。
自分が関係していることが明らかになったことで、サライはまず、ケネス星最高幹部会に諮って、タイムマシンの研究に予算を多く割くように、提案した。
期限までに、タイムマシンの精度を上げておかなければならない。
さて、デルタ星の方はどうなっていただろう。
目の前で2名の士官が、なぞの機械とともに消えてしまった。
この事実が、洞窟調査班の宇宙連邦軍のリーダーから、デルタ星の軌道上で旋回している宇宙連邦軍宇宙艦テラに、すぐに報告がなされた。
新たに士官を投入して、洞窟をくまなく調査することとなった。
そして、他の調査班にいた副長バランは、すぐにこの件の指揮を執るべく、小型船に乗り込んだのだった。
副長バランの乗った小型船が、洞窟調査班が小型船を着船させていた草原に到着した。
ちょうどその時、ネドがみつかった。彼が消えてから、45分後のことだった。気を失った状態で。洞窟脇の草原の中でネドは見つかった。