「うむ、よい、許す」
と王はえらぶった口調で言うと、関心を持ったように、再びじっとネドを見つめた。
この宇宙ステーションの責任者の大佐が、ここで声を上げた。
「さあ、お席にご案内して」
「皆様、間も無く会が始まります」
事態の収拾を図りながら、大佐はゼルダの王とともに王の席の傍に近づくと、改めてゼルダの王に謝罪を行った。
ネドが宇宙連邦軍のエスコートの士官の手を振り払ったのには訳がある。厳格な身分制度をしいているゼルダでは、王に触れたものは死刑である。それを知っていたネドは咄嗟に行動に出たのであった。
その後会は始まり、開会のあいさつに立ったこの宇宙ステーションの大佐が、この事件のお詫びを述べたのは言うまでもない。
食事が供される中、宇宙連邦の幹部の挨拶や乾杯、その後宇宙連邦軍のお偉方の挨拶が、通常通り行われた。やがて食事が進んだところで、立食用の飲み物のトレイを持った係員が会場を回り始めた。
これを合図に、次々星の代表者同士が立って会話を始めた。あちこちにグループができ始めた。
さて、ネドはというと、硬い表情で会場の決められたポイントに立って警備の任務に就いていた。
仕事である。目線は周りの賓客に向けられていたが、思考は、ただ一つに向けられていた。
肩が痛い。ねじられた肩が猛烈に痛い。右腕はしびれたままである。
勤務終了まで時間がある。
立っているのが辛い。
早く時間が経たないかと、もう祈るような気持ちでいた。
そこへ、
「ネド、部屋へ戻りなさい」
はっとして振り向くと、おじいさんが心配げにネドを見つめていた。
ネドはおじいさんを見て頷いた。もう無理だ。
すぐにリーダーの士官に断りを入れて、臨時の職員宿舎になっている宇宙連邦軍宇宙艦テラの、自分の部屋に戻ったのだった。
自分の部屋に入ると、もうドクター、マシアスが来ていて、僕のベッド脇にケネスの医療機器を転送させていて、パネルを見ていたようだった。彼が振り返った。
「ネド」
「すまない、Dr」
「横になって」
僕は左手を挙げて断った。
「大したことは無いよ。ここで大丈夫だから」
僕は言ってすぐ近くのソファに腰掛けた。
ドクター、マシアスは片眉を上げた。
僕は彼をもう一度見る気力もなく、ソファに腰掛けるとすぐに目を閉じた。
フー