値がつりあがる。
ネドは何とかしなければと、あせっていた。縛られた手首を動かしてみる。幸い、縄がケネスの器械を押した形となっている。ダメかもしれないが、ネドはコンピューターと小声で呼びかけ、縄を転送しろと呟いた。
腕が瞬時に解放された。
ネドは素早く立ち上がると、セリの台の上のタリの手を引っ張ってタリを降ろし、逃げようとした。
が、
そこで、
ビュッ、バシ
「この野郎、何しやがる!」
店の主人のムチがネドの背中にしなって当たった。
鋭い痛みがネドを貫いた。
ネドは倒れ、気を失って地面に突っ伏した。
「待て待て!私に買わせろ。二人で2000、いや3000ベシラ出そう」
「さ、3000ベシラだと」
まわりの奴隷商人たちからどよめきが上がった。
セリをしていた男は台から降りていたが、すぐに台に上がり、
「男と女の奴隷だ。今、合わせて3000ベシラと声が上がった。他にいないか。いないか。・・よし、あんたで決まりだ」
3000ベシラで買うと声をかけた男は身なりの良い裕福そうな商人で、脇の供らしい男にお金を用意するようにと話をしている。
脇の男が自分の荷物を持って、店の主人に近づいた。
裕福そうな商人の男は倒れているネドに近づいた。
支払いを済ませた供の男もネドを心配そうに見つめた。
ガシ
店の主人がネドを蹴った。
「起きろ!お前の行く先が決まったんだよ」
あわてて商人がそれを制した。
「よしてもらおう。私のものだ」
ネドは蹴られた衝撃で気が付いたが、背中に猛烈な痛みが襲ってきた。燃えるようなひどい痛みのため、動くことができない。
セリが終了し、人だかりが引いていく。脇を通っていく奴隷商人たちは、3000ベシラとはものずきなと、冷ややかな視線を裕福な商人と供に注いで、去っていった。
縄をほどかれたタリは、ネドの脇にうずくまって、ネドの額をなでていた。
広場から人がいなくなった。
その瞬間、キラキラ、ネドたちの周りの空間が光った。
ネドはケネス宇宙軍宇宙艦ギガのゲストルームのベッドの上に転送された。
すぐに船医マシアスによってネドの額に透明な医療器械が置かれ、ネドは深い眠りに落ちた。