手早くネドは毛布を大きい布袋から出すと、一枚を岩陰の下に敷いて、身振りでタリをその上に座らせ、そしてタリに別の毛布を羽織らせた。ネドは一緒に入れていたテラの食べ物も出してタリに渡したが、さすがにタリは食欲はないようだ。ネドは別の毛布を傍に敷いて座ってはみたのだが、思考が落ち着かない、駆け巡る。
灯りだ。灯りがいる。暖も取らないと。この毛布では無理だ。周りにはサソリのようなものはいるのだろうか。危険はないのか。陽が完全に落ちる前に急がないと。
ネドは、タリにちょっとルワの様子をみてくると言って、タリのそばを離れた。ルワの背から布袋を降ろして触りながら、右手で左前腕のケネスの器械に触れて、ケネスのコンピューターに、テラの僕の部屋に置いてあるストーブをここに転送してくれ、と小声で命じた。 この小型ストーブはテラで地上訓練用装備として配られたものだ。灯りにもなるし、暖かいし、充電なしで20時間は持つ。
ルワの布袋を取ってきたようなそぶりでネドがタリの前で布袋から銀色のストーブを出すと、タリはさすがに興味を持ったようだ。
「それは何?」
「まあ、たき火のようなものだよ。僕らの。そう、クワンのね」
ネドが起動させると、器械はブーンという音をさせて、赤い光を放った。暖かい。
「さあ、タリ。元気出して、飲んで。少しは食べて。心配はいらないからね」
「心配いらないって、どうするの。ヌコは取らないつもりなの」
「いや、取って帰るよ。仲間が捕らわれているんだしね」
「じゃ、生贄なしで、ラグーはどうするの?」
「ラグー?ラグー。そ、そう。その話を詳しく聞かせてくれないか。ラグーの話をね」
タリに話を促すと、タリは怒っていたのだが、あきらめたような顔をして、一気に話し始めた。ネドは聞き終わると、タリに休むように言って、僕はルワを見に行くと言って、タリから離れた。
ラグー、ラグー。確かに名前は聞いた覚えはあるが、勉強不足がたたっているな。ま、どんなものであれ、銃の腕には自信がある。ネドはルワの近くへ行って、タリから見えない位置まで来ると、左前腕を触って宇宙連邦軍の銃を小型船から転送させた。目の前に宇宙連邦軍の銃が現れると、ネドは素早く懐にしまった。僕は宇宙アカデミーの射撃テストでは、常に成績は上位であった。
ネドは今度は、左前腕を触ってケネスの自分の部屋から小型パソコン(2センチ角、ホログラム用)を転送させた。それに音声認識させて、ラグーがいると言う場所の立体地図を足元の地面に出させ、その中にラグーのいる位置を光らせた。
なるほど、これから行く小山を超えた盆地には、十個ほどオアシスがあって、ラグーはそのオアシスにいるようだ。一つのオアシスに4、5匹程度か。ネドはヌコも光らせた。ヌコはオアシスに生えているようだ。なるほど、ラグーと重なる。ネドはラグーの姿を立体で出させた。
これはなるほど、すごいな。