サライは疲れた目に手を当てながら、補助席で考えていたが、決断したように脇のパネルを触って、ラムル総統に連絡をした。
「ラムル総統、ラムル総統、サライです」
「なんだね。聞いているよ」
ラムル総統は、ケネス宇宙軍本部で正面スクリーンを見ていた。
「会議出席者を乗せているハボス艦内部に、カメラを飛ばす許可をお願いしたいのですが」
「なるほど。わかった。やってくれ」
「ありがとうございます」
自星以外に透明スクリーンをかけたカメラを飛ばす場合、ケネス星では、ある基準を設けていた。
いくら科学技術の発達のおかげで、どこの星にもカメラを仕掛けることができるのだが、自制すべき枠を設けるべきではないか、とケネス星では考えていた。
(ミュール星の件では、これは後手に回って裏目に出たが)
サライは、すぐにパネルを触り、会議出席者を乗せたハボス艦の脇に、透明スクリーンをかけた状態で並走しているケネス宇宙軍宇宙艦アビスのキャプテンに、カメラ設置の指示をしたのだった。
やがて、正面スクリーンが変化した。スクリーンの中央部分を避けて、額縁のように、複数のカメラの映像が映し出された。
「座標のカメラはどれかな?」
サライが呟くと、ミッドのコントロールルームの士官が、声を上げた。
「画面枠をグリーンにします」
2台のカメラ画像の枠がグリーンに光った。横の専門職の連携が強いケネスである。
「ありがとう」
サライは、精神波を送ってきていた座標の部屋のカメラの映像に目を向けた。よく見ると、部屋の中央に古びた機械が置かれている。
よく見ると機械の脇には、ハボス星人が座り込んでいて、どうも、疲労困憊して動けないようだ。
目は閉じている。眠っているのか。
この人物なのかと、サライは思った。
同じ部屋の入口付近には兵士が2人。見張りだろう。