ネドは、宇宙連邦軍の銃で訓練は積んではいるが、ケネスの銃には慣れてはいない。
副長シリスがチラとネドを見た。
まずい。
ネドの銃に対する自信はみごとに打ち砕かれた。
構えているネドの腕が痛くなったころ、ようやく静寂が訪れた。
周りの地面はラグーで真っ黒な絨毯を敷いたようになっている。
ネドは我に返って、
「シリス副長、お世話をかけてしまい、すいませんでした。みんな、すまなかった。ありがとう」
副長、および上陸部隊全員にネドはそう言いながら頭を下げた。そして、オアシスに向けて駆けだそうとしたが、
「ネド、待ちなさい。ちょっと待って。確認してからだ」
シリス副長がネドを止めた。副長はケネス宇宙艦ギガのコントロールルームに連絡を取り、盆地全体および盆地の外側二十キロ四方の生体反応を調べさせた。
そして、ネドに向かって、
「ネド、ラグーはここにいるだけだ。安全だ。もう、オアシスに行って大丈夫だ」
と言った。
「ありがとうございます、副長」
ネドは一番近い緑のオアシスを目指して布袋を手に駆けだした。
マシアスが追いかける。
オアシスに着いた。
低木と草の間を歩いて行くと、池がある。
池の周りに、テラで事前に教わった青いヌコがびっしりと生えていた。
ネドは、ヌコのそばによると根元から素早く抜き始めた。
抜いていると、足元の地面がぐぐっと下がって、転びそうになった。
足元を見た途端、視界の端に、茶色い丸い塊が飛び出していくのが見えて、思わず、懐に入れたケネスの銃に手が伸びた。
「ネド、止めなさい、害はない。彼らは草食だ」
マシアスがネドに言いながら、近づいた。
「彼らは今、出産の時期で、穴に籠っているんだよ」
「・・・」
「今の時期は、外に出ている個体の数は少ないんだ」
「そ、そうか」
「そういうことだ。今の時期のラグーは飢えているんだよ」
僕は勉強不足だ。
今、落ち込んでも仕方がないが。
ネドは持ってきた布袋がいっぱいになるまで、ヌコを抜いていった。
「さて、マシアス、僕は行くよ」
そばで見ていたマシアスに声をかけて、布袋をかついで、ネドは元来た方向に歩き出した。