ネドは真っ蒼になった。
「出来ぬと申すなら、そちどもの命の保証はないぞ」
「えっ・・・」
「もし全員返してほしくば、・・そちどもの武器をここへ持ってまいれ」
「は?・・私共は、武器を持ち歩いてはおりませぬ」
「持って来れるであろう。世に嘘を申すでない!」
王様の口調が、変化した。
王様の合図で、衛兵が上陸班の背中を棒で押した。
まずい、まずい。
ネドはバラン副長に通訳しながら、自分が呼吸しているのかさえ、わからなくなった。
バラン中佐はちょっと固まっていたが、王様に視線を向けて、落ち着いた声で話し出した。
「王様に申し上げます。私共は、クワン王の命でこちらに参っております。聡明な王様のご推察の通り、私共クワンの武器は、こちらの国パラスの武器より優れていると申せましょう。しかし、私共はクワン王より、武器を他国に売ることは禁じられております」
「売れとは申しておらぬ。置いていけと申しておる」
「お言葉ですが、それも禁じられております」
「そうか、では、この者を置いていけ。その方らの命もこの場で奪うこともできるぞ」
「それは、・・それは困ったことになると存じます」
「その方らは困るであろう」
「いえ、こちらの国、パラスにとって困ったことになる、と私は申しております」
「何だと!」
ネドは、できるなら、この場を離れたいと思った。
「私共の国クワンは優れた武器を持つ、強国でございます。もし、王様の命で訪れた国で、私共がこのような扱いをされ、捕らわれる者がでたと、クワン王の耳に入ることになれば、クワン王の怒りを招くこととなります。またもし、全員戻らなければ、いずれは私どもがどのような扱いを受けたか、いずれにしろクワンの王の知る所となります」
「こやつ、われをおどすか!」
「王様、私共は、クワン王の命で来ております。私共の帰参が遅れれば、そのことだけで、クワン王はいぶかしく思うと存じます。私共のクワン王は近隣諸国で穏やかな王と言う評判を得ているわけではございません。クワンの強力な武器を持った兵がこちらに来ることになると存じます」
王様の手が震え、顔色が変化している。怒りが全身に満ちているのがわかる。
ネドは通訳しながら、もう祈った。
王様は沈黙した。