ネドもみなと同じくセンサーを片手に、ちらちら、動物の影を追ったり、周囲の状態を把握したり、任務に集中しようと思うのだが、どうも、サライ最高司令官の昨夜の顔がチラついてならなかった。
冷静になって今思うと、僕はケネスの援助がいらないなんて、決して言えないのである。うつうつと、頭の中にいろいろな考えが、浮かんでは消えていった。
途中、何回か歩みが中断され、学者の調査に費やされたが、やっと、目的地の洞窟の前まで来た。
この地域の洞窟は3ヶ所で、そのすべてを今回の調査で終える予定であった。
まず、最初の行動予定として、洞窟周りの調査を学者たちがしている間に、宇宙連邦軍の士官のうち10名が、先に洞窟内に入り、安全を確認する。
ここで、ネドはまたしても、ドルー伍長と一緒になった。
この時、彼の姿をチラと見たとき、ケネス星人であるネドは、自分の頭にある思考が入ってきたように感じた。
ただならない思考である。彼の動揺がそのまま伝わってきている。彼はここに来たことがあるようだ。
10人はリーダーの指示に従ってライトが付いたヘルメットをかぶり、装備の点検をし、合図とともに洞窟に入っていった。
ネドは、また、彼をチラと見た。
彼は深刻さが増したように、張り詰めた顔をしている。ネドに、彼のひどい動揺がそのまま伝わってきた。いや、まずいな。
ネドはドルー伍長から、あまり離れずにいた。
チラチラと彼を見ながら、洞窟の調査を続けていく。彼の思考が、ぼんやりとだが、わかる。伝わってくる。
ネドの心臓がバクバクと音を立てた。
彼が、洞窟の脇道に入って消えた。
ネドは咄嗟に、自分のヘルメットを取り、ライトを下げた。そして、静かに後を追った。
彼のヘルメットのライトが見える。間合いは詰めない。
洞窟の脇道の先が、いきなり大きく広がった。まるで部屋のようにポッカリと穴が開いている。
ドルー伍長が、しゃがんでいる。ネドは足音をしのばせて、入り口わきの岩陰に身を潜めた。よく見ると、彼は、1メートルくらいの高さの半円柱型の、銀色に光る機械のようなものの前にしゃがんでいるようだ。いや、機械は2台だ。彼は半円中の形の機械のようなものが向かい合わせに置かれている間にしゃがみこみ、その片方の機械を触っているようだ。
機械を操作させようとしているのか。
ドルーが、いきなり、立ち上がって振り返った。
「そこにいるのはわかっている。誰だ!出てこい!」
するどい声を発し、ネドのいる方向を見ているドルーの顔は、もう、すさまじい形相になっていた。
ネドは、全身が凍ったように感じた。だが、ゆっくりと、彼を見据えるように立ち上がった。