ベッドの背側のクッション素材の壁がネドを包むように突き出てきた。
やんわりとネドがクッションに包まれると、キャプテン、キースはネドに話し出した。
「さて、これで話ができる。上官の前で立っていなければならないのは他星だけだからね。まず、君が気になっていることから始めよう。タリさんと言ったかな。君と一緒に乗船した女性は」
「ええ、タリです。タリは?」
「タリさんは今、別の部屋で休んでもらっている。ま、休むというより、眠っているの方が正しいな。その方が、彼女のためでもあるからね。環境が激変するよりは良いだろう」
「ええ。それで?」
「それでと言うのは、今後という意味かな?」
「そうです」
「タリさんについては、彼女は商務省の管理下に入った。知っての通りケネスは宇宙一商業の発達した星だよ。良い勤め先がみつかると思うよ」
「勤め先?勤め先」
「ああ、先ほど、フェレル商務省長官が話していたから」
「え?フェレル長官が」
「ネド、君を助けたのは、フェレル長官だよ」
「え?」
「奴隷を買い付けたのは初めてだと笑っておられた」
そうか。
「ベーター星には商務省の人間がいろいろ買い付けに行っているから、情報入手も早いが、しかし、長官は行動の早さも抜群のセンスを持っておられるな。自ら行かれるとは」
ネドはため息をついた。
「それから、このギガだが、今、惑星Zに向かっている。我々はそこで休憩することになるが、ネド、君はケネス星へ帰ってもらう」
「え?」
「これは総統の指示だよ」
「でも、でも、僕はテラでの任務がありますから」
「それは、ドクター、ネプスがもう、代わりにテラに乗船しているよ」
「ええ?」
「ネプスは任務に当たって喜々としていたと聞いたよ」
ネドは暗澹たる気持ちになった。(ネド以外のケネス星人は、他の人間になりすますことは可能なのである。ただ、誰もしようとはしないのだが)
「ネド、落ち込みなさんな。ま、総統は孫とゆっくりお話がしたいと思っているんじゃないかな」
無人、無生物の小惑星Zの上空をケネスの大型宇宙基地が旋回している。透明スクリーンをかけ、周りを通るどの宇宙船からも悟られずに。