ワームホールの位置はだいたいわかっている。
ここで、ネドは宇宙連邦軍テラへ報告を入れようとしたが、止めた。これから何が起きるかわからないが、現在の宇宙連邦軍では、ギーア船と遭遇しない方が良いと思われた。
まもなく、ギーア船と思われる、みたことがない中型船がワームホール方向へ向かっているのが視認された。
すぐに、ギーア船から金色のビームがこの小型船に向かって発射された。
シュ
好戦的星人には躊躇が無い。
ケネス宇宙軍宇宙艦ギガからネドの小型船へ、防御スクリーンがすでに張られていた。
ネドは咄嗟に操舵を切った。
シュ
ビームがまた発射された。
ネドは反射神経には自信があるが、この小型船には武器が装備されていない。
シュ
避けるだけしかできない。
小型船内に、通信機から、ケネス宇宙艦ギガのキャプテン、キースの声が響いた。
「ネド、速度を落としなさい。防御シールドを張っているから、心配ない。あとはこちらでやる」
ネドはその声を聞いたのだが、もう、ネドの頭にゆとりが無くなっている。
ネドの視線は目の前に見えているギーア船から動かない。
「ネド、減速しなさい!」
キャプテン、キースの声が再び響いた。
シュ
また、ギーア船からビームが発射された。
今度は、小型船にもろに当たったようで、正面の窓が金色にまぶしく光った。
ケネス宇宙艦ギガから張られた防御スクリーンのおかげで、小型船は多少揺れはしたが、航行に支障はない。
目の前のギーア船がワームホールに入ったようで、いきなり視界から消えた。
ネドも続いてワームホールへ入る。
ワームホールの中は、様々な色の光がまぶしく光って揺らいでいた。
ギーアの中型船と宇宙連邦軍のネドの小型船は、光の渦の中を直進して行った。
ネドはこのワームホールが苦手である。
まだネドが少年だったころ、教育目的でケネス宇宙艦には何度も乗せてもらっていたが、ある時ワームホールに入ったことがあった。
少年のネドはこの光の渦を見て、気持ちが悪くなり、ぐったりとして目を閉じた。
この時の艦のキャプテンがネドの異変にすぐに気が付き、ワームホールに入ったばかり だった為、艦を逆走させて、艦をワームホールから出させたことがあった。