「最高司令官、このままでは、ハボス艦は後5時間ほどで、ハボス星の宇宙域に達します」
これが報告ではないのを、サライは分かっていた。
コントロールルーム全体のケネス星人の圧力を感じた。
「わかった、ありがとう」
サライは振り返って、声を上げた乗員に、いつもと変わらない調子で言った。
ちょっと時間が欲しい。
我々はケネス星人である。それを誇りにしてきた。人を決して傷つけない。傷つけることは無い。脅すこともしない。それがケネス星人だ。相手も含めて幸せを考えて生きていく。それがケネス星人だ。それが、我々の誇りだったではないか。
私は最高司令官として、これを全ケネス星人に説くことはできる。我々はケネス星人ではないかと。
このままハボス艦を自星に帰すことは可能だ。
目線を正面スクリーンに向けると、ラムル総統の治療が終わったようである。
サライが
「ネドをズームアップしてくれないか」
と呟くと、隣のキャプテン、シュメルが、振り返って、
「ズームアップして」
と後ろの士官に目線を送った。
すぐにネドが大写しにされた。
前より顔色が良いようだ。
マシアスと脇で話をしていたラムル総統が、画面に振り返った。
ラムル総統は左前腕を触って、緊急通信をオンにした。
総統にカメラの焦点が向けられた。
ケネス艦全艦、そして、ケネス星全体に映像と声が流される。
ラムルは、落ち着いた声で話し出した。