ネドの防護スクリーンはどこまで上がって、彼を守ったのだろう。誰しもが、ネドを心配していた。そして怒っていた。肉親と同じ感情で。
「キャプテン、シュメル、休んでくれ。僕がここにいる」
サライは隣のキャプテン席のシュメルに言った。
「いえ、私は大丈夫ですから、どうぞ最高司令官、お休みになって下さい」
シュメルは、当然のことのように言った。
その時、正面スクリーンが切り替わって、ある部屋の映像を流し出した。
サライも、シュメルも
あっ、と声を上げた。
サライは気づくと、すぐに補助席のパネルを触った。
「キャプテン、キ-ス、これはどういうことだ?」
「ラムル総統の指示です。ネド中尉の容態を知りたいという星人たちの声に応えたいとおっしゃっていました」
「そうか」
と言いながら、サライは不安を感じた。
映し出された映像は、ネドが青白い顔でベッドに横たわっている姿だった。
脇でドクター、マシアスが、医療機器を操作している。
これが流されたことで、今、自分自身が感じているハボスに対する怒りと同じ感情が、自星人たちの心の中で増幅されていかないかと不安を感じたのである。
サライの頭の中で、いろいろな思考が駆け巡った。
今回の件は、起こしたのはハボス星であると、テラ側、つまり宇宙連邦軍側は百も承知であろうが、誰も見たものがいない以上、それを公にハボス側に訴えれば、ハボス側は当然白を切るだろうし、逆に誹謗だと非難してくるに違いない。
宇宙連邦軍宇宙艦内は、通路と、コントロールルームや医療機器の置いてある部屋等の重要とされる部屋以外は、カメラの設置がなされていない。
食堂の中で何が起こったか、証拠となる瞬間の映像は、宇宙連邦側には捉えられてはいないはずだ。
ハボス側がどうして、これだけこちら側に攻撃を仕掛けてきたのか、サライは分かっていた。
それは、僕らが容易にハボス艦を攻撃しない事がわかったからだろう。この間のガンマ星の件で証明されたのだ。他船を攻撃するなどありえない星であることが。
今回は星の後継者であるネドとケネス星最高司令官の僕が同じ船に乗るという、彼らにすれば絶好の機会だった。