通路を歩いて行くと、左側に扉が現れ、近づくとシュッと扉が開き、広い居間のような部屋が現れた。中には、ソファとテーブルが置かれている。
楕円の窓の外は、暗い宇宙と、星が小さく見えている。
「どうぞ、ゆっくり、おくつろぎください。あちらに飲み物と食べ物の合成調理器があります。音声認識で動きます。ほぼ、何にでも、また何語でも対応します」
と、ネドはまた、笑みを張り付けて言って、合成調理器とソファに向けて手を上げた。
3人がソファに腰かけると、
「すいませんが、僕はちょっと、失礼します。することがあるので。ここは安全です。僕が戻るまで、ここで動かずに待っていていただけませんか。そう、ミラン、君もここで待っていていくれないか。これ以上他星人には知られるわけにはいかないんだ」
ミランは説明を求めたいという表情をしたが、ネドの真剣な顔を見て、口を開くのを止めてくれた。僕はすぐに休憩室を出た。
頭がガンガンして、もう、吐きそうである。
だが、ここのコントロールルームに行かないと。この基地自体を動かさないと。テラに戻る時間がある。僕にはやることがある。
でも、外はどうなっているのだろう。世話をかけたくはなかったが、もう相当、ケネス宇宙軍を巻き込んでしまっているに違いない。ケネス宇宙軍に連絡をしないと。
ネドは暗澹たる気持ちで通路を歩いていた。
そこへ、突然、
「ネド、こっちに来て」
ドクター、マシアスの声が響いた。
「あ、ドクター、マシアス。でも、僕は時間がないんだ」
渋るネドに、
「ネド中尉、来て」
シリス副長が、顔を出して、声をかけた。
「副長」
シリスは後始末の任を負ったのである。
呼び止められて入った部屋が、医務室だと分かった途端、顔を曇らせたネドにシリスは、
「ネド中尉、もう、君は限界だよ。転送にかけられない状態なんだ」
「・・」
「ケネス宇宙軍に頼りたくない気持ちはわかるが、もう、無理だ。限界を知ることも大事だよ。テラの小型船のエネルギーの残量からして、もう、小型船はテラまで自力では戻れないよ」
「エネルギーを、エネルギーを、使いすぎた」
「そうだ。それにこの宇宙基地は、君たちのルートよりかなり外れているからね。ここから戻るだけでも、小型船では距離がある」
分かってはいたが、だからこの無人基地のコントロールルームに行こうとしたのだが、ネドはため息が出て、思わず下を向いた。途端、めまいがして、ふらついた。