「おい、マシアス、僕のミュールの疾病レポートを読んでいないでしょ」
「読んだよ」
「じゃ、なんで」
「だいたい読んだんだ」
「ふーん」
「スプーム、レポート長すぎ。あれじゃあ読むなと言っているようなものだよ」
「そうかい。君がミュールへ行くと聞いて、せっかく送ったのに」
「おいおい、怒るなよ」
キースはやれやれといった顔で、ゲストルームの壁を触って、予備のベッドを出して、二人に背を向け、ベッドにうずくまった。
やがて、ドクター、スプームは、ネドのベッド脇の医療機器でネドの回復を確認すると、衛星コムの自分の研究所へ転送で戻っていった。
30分は寝ただろうか。
ざわざわとゲストルーム脇の通路に人の気配がして、シュッとゲストルームの自動扉が開いて、ギガの副長シリスが部屋に入ってきた。
シリスは部屋の中をさっと見回すと、ネドの寝ているベッドをちらと見て、そして窓の脇で簡易ベッドに横になっているキャプテンがピクリと動いたのに気が付くと、
「どうぞ、キャプテンそのままで」
と声をかけた。
キャプテンキースはその声を聞きながら、さっと起き上がった。
「大丈夫だ、シリス。回復したよ。さて、副長、ごくろうだった。よくやった」
「有難うございます」
「報告書は後でいいから、まずは休んでくれ」
「有難うございます。ところで、ネド少尉は大丈夫ですか」
その声を聞いて、ドクター、マシアスが声を上げた。
「ええ。ミュールの感染症を起こしましたが、もう、大丈夫ですよ。疲れているようなので、休ませているだけです」
「良かったです」
「では、キャプテン、失礼します」
「ああ、僕も休むよ」
副長シリスはゲストルームを後にした。
ネドは2時間ほど熟睡した後、目を覚ました。
いつもと違う天井が視界に入り、素早く起き上がった。
「ネド、そのままでいて」
気が付いたドクター、マシアスが声を上げた。
まだ、早い。
「大丈夫だ、マシアス」