推力を限界まで上げて追いかけてきているネメスの中型船は、ネドの小型船に停止を迫る通信を送り付けていたが、小型船が反応しないのがわかると、すぐに撃墜準備を開始し、射程距離まで入れば撃墜するつもりでいた。
小型船を撃墜し終わるまで、攻撃は止めない。
この船の揺れや、正面窓の光の炸裂を無視して、ネドは通信機をオンにして、
「ケネス宇宙基地、ケネス宇宙基地。こちらは遭難船だ。至急収容してくれ」
と声を上げた。
少し待って、ふたたび繰り返す。そして、三度。
やがてネドの声に反応し、小型船の通信機から、ケネスの無人宇宙基地のコンピューターの声が響いた。
「声紋確認中。・・声紋確認終了。救助を開始します」
ネドは切り替えの為、すぐにこの小型船の推力を切ろうとしたが、ああ、そうかと思い、とどまった。
一方、船の振れと光の閃光は続いていてる。
ネドは早くしろと、心の中で、怒鳴った。
さて、今回もネドの小型船に並走しているケネス宇宙軍の当番船は、ギガであった。
もう、持ち回りは辞めて、ギガに専従させた方がいいだろうと、ケネス星最高幹部会で決定していた。
今回のネドの宇宙連邦軍での任務だが、情報入手が速いケネスである、大きな案件として、万一の場合については、ネメス星の地上での救出作戦についても、もう検討がされていた。
当然、ネメス宇宙基地を飛び立った後の緊急時についても、救出作戦は検討はされていたが、如何せん、作戦会議にネド自身が加わっていないことは、致命的であった。
ネドのテラの小型船が、ネメスの宇宙基地を飛び立った時、緊張状態であったギガのコントロールルームにも安堵の雰囲気が漂よった。
ケネス艦ギガは透明スクリーンを張りながら、ネドの小型船を伴走していった。