ミュール星は、まだ宇宙艦が着艦できるような宇宙基地を持っていない為、周回しながら、ミュール星と通信のやり取りを開始した。
通信は、全てミュール宇宙軍の地上本部との間で行われた。
今回の訪問で、ケネス星からは、5人が地上に降り立つ旨の通信を流した。
さて、会合当日である。時間となった。
ギガの小型船に今回のネドを含むメンバー5人は乗り込んだ。
指定された着陸地点の上空から、旋回しながら下を見ると、なるほどそこは大きな敷地の軍の施設のようだ。近くに送電線の大きな鉄塔が立っている。
我々が着陸する地点は施設の建物群からは離れた草地である。建物の方は、大きい建物が5棟である。
いわゆる車のようなものが、草地に多数止まっているのが見える。武装しているように見える。
すでに小型船には防御スクリーンが張られている。
時間となった。ゆっくり降下する。
我々が外へ出ると、固まって待っていた4名ほどのミュール星人が、ゆっくりと我々に近づいてきた。全員が白い防護服のようなものを身に着けている。
なるほど、我々異星人はどんな病原菌を持っているかわからない。当然、感染を恐れてそれなりの対策をしているのだろう。
我々ケネス星人の方は、新しく惑星に降り立つ際は、必ず、体に防護シールドを張っている。
宇宙連邦内は、現在はどの惑星に対しても、防護服が必要なくなっているが、交易が始まった頃は、互いにどの星もこうした対応をせざるをえなかったものだ。
歩きづらいのもあってか、彼らはゆっくりと我々の前まで来て止まると、先頭にいたミュール星人が、さっと肘を張って両手を上に上げて、頭を下げた。
そして、防護服に取り付けられた小型マイクを通してミュール語で挨拶を始めた。
防護服から覗く顔は笑顔を張り付けているが、明らかにひきつっている。手は震えている。
「ようこそ、ミュール星へ、ケネス星のみなさま、私は、この星の代表者であるモルの副官でザドと申します、皆様をお迎えできてうれしく思います」
発した声も震えている。
ケネス側は、今回の訪問の目的である貿易の責任者である商務省副長官ルコが、前に進み出た。
キャプテン、キースはさりげなく、道を譲った。
「お迎え有難うございます。私は、今回の訪問の責任者で、ケネス星商務省の副長官、ルコ と申します。ミュール星を訪問できましたことを嬉しく思います」