格納庫の中では、使われて何年も経ったように汚くカモフラージュされた小型船が、僕らの出航を待っていた。
乗ってみると、小型船後方には、払い下げ品の備品が手押しのカート2台にすでに積まれていた。
二人で操舵席に着いたが、ミランは明らかに挙動がおかしい。声も震えているし、パネルを操作する手も震えている。
まずい。
僕は
「ミラン、僕はネメス星には行ったことがある。ネメス語も話せる。だから、僕に任せてくれ。心配しないで。大丈夫だから」
と、声をかけた。(実際は行ったことは無いが)
宇宙連邦軍宇宙観テラは宇宙連邦軍第9宇宙ステーションを出航した。ネメス星のセンサーの範囲内に近づくと、テラは予定の位置に停止した。
計画通り、僕らの小型船はテラの格納庫を出て、宇宙連邦軍第9ステーションとネメス星との商業ルートに入って、ネメス星のセンサー範囲に入り、ネメス宇宙ステーションへ向かった。この小型船の通常速度で約22時間の道のりである。
やがて、ネメス星の宇宙ステーションから、船名、乗員の人数、氏名の確認の通信が入った。最初の試練、第一段階だ。
語学練習の成果が発揮された。
ネメス星の宇宙ステーションの指示通りに、テラの小型船を宇宙ステーションの番号の振られた格納庫に乗り入れさせた。
格納庫を出ると、僕(ネド)が先導して、ミランと荷物の積まれたカートを、荷物の検査場へ押していった。立体シュミュレーションの成果で、場所に迷うことは無い。
検査場へ着くと、このネメス星では、他星との交易にたずさわる商人は、かなりの数にのぼることがわかった。検査場はいっぱいである。
順番を待ちながら見ていると、検査は入念に行われているようだ。なかなか進まない。禁止されている思想関係の物、贅沢品とみなされる物が一つでも紛れ込んでいたら、大変な騒ぎとなるのだろう。ネメス星へ輸入で持ち込める商品の項目は、厳正に決められているとのことであった。
僕らの順番となった。僕らの荷物はカート二つである。全ての荷物をここで開封する。宇宙連邦軍発行の払い下げ証明書は完璧である。何の問題もない。しかし、ミランがおどおどしているのが、ネドは心配でならなかった。
検査官がミランに何か聞いた。ネドは咄嗟に、検査官に対し、問題ないとの念を送った。
ネドの目の色が変化した。
そして、早くしてくれないかと嘆く、検査待ちの人のつぶやきを、念に載せて、その検査官の思考に送ったのである。
検査は無事終わった。