「うーん、なるほどね。んん、そうだなあ。ある意味、僕らの、僕らのうちで、外と接しているケネス星人と星内だけで暮らしているケネスの人間とでは、感じ方が違ってしまっているのかな。鈍くなってしまっているのかな」
考え込むようにフェレルは視線を落とし、皿の上のものを食べた。
「あっ、そうだ。もう一つ、言ってもいいですか」
どうぞというように、フェレルはにこやかな笑みを浮かべて頷いた。
「僕は、決心したことがあるんです。僕は、他星人、いや、僕以外の人かな、を嫌いになるのは止めたんです。これは決意です。そうでなければ、自然に任せていたのでは、嫌いになってしまうから。僕は、これが、この決意が広まってくれないかなと思っているんです。でなければ、本当の意味で、幸福な人たちで満ちた世界が、幸福な人たちだけしかいない世界が、永久に作りあえないと思うんです。だって、寂しいでしょ、嫌われたら誰だって。それに、みんな欠けた茶碗なんだし。嫌われるようなへまを絶対しでかしながら生きているんだし。嫌な目にあっても、忘れてあげて、そう、忘れあって、お互い聞き流してあげて、嫌いにならないで生きあっていこうと、みんなが思ってくれないかな。他星人同士でも。みんながみんなね。僕は、幸せな人間たちだけで満ちた世界が、訪れてほしいんです。この宇宙に、この宇宙全体に」
ここまで言うと、やっと言い終えたようにほっとした顔をして、ネドはフェレルを見た。
ネドは周りのケネス星人たちに目線を向けた。
それから、目をちょっとつぶって、周りの住宅の人たちが、家の中で穏やかに食事をしたり、団らんしたりしているのを感じた。
静かな夜を迎えているケネス星を想い、そして、宇宙連邦軍宇宙艦テラを想い、ミランを想い、サリトを想った。
自分の前には、不確定な未来が開けている。
でも、していくことがわかったことで、気持ちはとても落ち着いていた。
そんなネドを、フェレルは優しい目をして見つめていた。
完