僕が断った時の、彼の顔が浮かんでくる。
無尽蔵に援助を求めるのは、違う。それは甘えだろう。僕は、その時はそう思った。
結局は、その危険な地域での調査に、宇宙連邦軍テラの降下部隊が入った時には、ケネス宇宙軍として、宇宙連邦軍テラの隊員に一人のけが人も出ないように、影の援助をしたのだったが。
サライがずっと、自分の執務室で色いろな想いに捉われていた時、ラムル総統はどうしていたのだろう。
ラムル総統は、ケネス星の神殿にいた。
神殿の心臓部に当たる部分に。
祈りをささげる場所に。
これだけ科学技術が発達したケネス星であったが、霊界との通信手段として、神殿という存在は、存続し続けていた。
ラムル自体は、霊を見たり、霊と話すことはできなかった。
自分が、神官の職も親から引き継いだにもかかわらず。
ただ、霊を実体験していないが、自分の親は、実際に見たということを事実として僕に語っていたし、話をした内容を日記に残していた。
ケネス星の長い歴史の中で、残されてきた霊界に関する証言は、かなりの量にのぼっていた。
打つ手がない時、生きているものはどうしても、生きているもの以外のものにすがろうと思うものなのだろう。
ラムルは心の中で、死んだ自分の父を呼んだ。そして、死んだ自分の息子を呼んだ。
何とか、ネドを、あなたのひ孫を、あなたの息子を、助けてもらえないか、この世界に戻してもらえないかと、必死に祈り続けた。
5分、10分、15分
動くことを自分が忘れてしまったように、祈り続けた。
他のケネス星の人々は、どうしていたのだろう。
祈りを通して、亡くなった自分の縁者に助力を求めたり、ある者は、ネドの姿を次々思い浮かべて、涙したり。
10分、15分、20分
時は過ぎていった。
そして、ネドがこの世界から消えてしまってから、30分が経とうとしていた。