「ふーん、初めて聞いたけど、それが?」
「その利用者が膨大な数で、減っていかないとネプスが言っていた。僕らが僕らだけで生きてきた時は、利用者は非常に少なかったのよ」
「スプームは使ったことがあるの?」
「まあ、あるよ。・・うーん、ずっと前だけどね、ま、その話は別の機会として。僕はねえ、いや、僕らはだ。他星人を嫌わないよう、繰り返し努力をしているのよ。なかなかむずかしいけど」
「努力?」
「ああ、努力。嫌わない努力と、そして忘れる努力。いや、忘れてあげる努力だ。そう、それに聞き流してあげる努力もあるね。僕らケネス星人はね、し続けているのよ。だから」
「だから商業の星としてこれだけの発展をとげた」
「そう。商業の星として、ここの宇宙連邦一の発展を遂げた」
「そうだね。でも、でも僕は他星人を好きにはなれないな。友達のミランは別だけど」
「友達ができたんだね」
「ええ、一人だけだけど」
「良かったね」
「ええ」
「ところで、んー、そうだな、彼らのどんなところが嫌いなのかな?聞いてもいいかい?」
「ええ。例えば、地球人。地球人は他星人の乗組員の、見た目の悪口を言うんだ。それも嬉しそうにね」
「ふーん」
「彼らは人を小ばかにするのが好きなんだと思う」
「なるほどね。あるだろうなあ」
「たくさんある。彼らは人の命を大切にしない。いや、人そのものを大切に扱わない。これってケネスではありえないでしょう。宇宙連邦軍だけで、年間百人近い死者を出している」
「ケネスではありえないね。一人死者がでれば、大変な問題となる。人の命は元に戻すことができないからね。本人の悲劇だけではなく、肉親にも友人にも、悲劇をもたらす。ケネスでは、人を大切にするのが基本だからね。他星人を雇う際でも、肉体を有している分、ケガをしたり、死ぬ可能性がある、ということを重々考えて、慎重に対処している。もちろん、精神的にも傷つけないように気を使っている。人間の心は繊細だからね。そして、僕らは、どの人間も一度しか無い大事な人生を生きていることを、全てのケネス星人が知っているからね。誰も辛い思いをして生きて行きたくはないでしょ。嫌われたくないでしょ。気を使い合わなければ、結局は互いに辛い思いをする」
「うーん・・・他星人はなんでわからないのかなあ」
「そうだねえ。過去の歴史から学ぶ、教訓の捉え方が違うのかなあ。僕らは長い歴史の中で、たくさんの犠牲者を出してきた。人間が人間に、これほどむごいことができるのかということをしてきた歴史を持っている。でも、これは他星も似たり寄ったりだと思うけど。僕らはその深い反省に立って、教育プログラムを作り、全ての星人が教育プログラムで教育されて、 大人になるというシステムを作り上げた。