この話は、感染のように、ネット上であっというまにケネス星中に広まった。
次から次へ、肉体を持たないケネス星人が誕生していった。そして、それは止まることが無かったのである。
サライ最高司令官も、ラムル総統(この時は星の王だが)も、星人たちを残して死ぬことができなかった。
そして、遂に、ケネス星人は肉体を持たない星人だけとなったのだった。
さて、話をもとの時間に戻そう。
ネドは、ケネス宇宙軍本部の転送機を使って、惑星Zの宇宙基地へ行った。
あの機械に近づくのに許可がいるのかどうかはわからないが、もし、なんらかの規制がされているのなら、公に本部の転送機で行った方が良いと考えたのである。
実体化した場所は、宇宙基地Zの転送室だ。
係のHR(人間型ロボット)に手を上げて合図をして、転送室からシュッ、通路へ出ると、ネドは医務室へ向かった。おそらく機械があるのは医務室なのではと思ったからである。
休憩室と食堂脇を通ると、どこかのケネス宇宙艦が着艦しているのだろう、がやがやと声がしている。
医務室に着いて中を見て見たが、機械らしいものは見当たらない。当然、誰もいない。
えーっと、どうしようかと思っていると、その時、部屋の中の2ヶ所に、金色の光の渦が発生し、二人が実体化した。
ドクター、マシアスとドクター、ネプスである。
「ネド、君はあの機械をみたいんじゃないかなと思ってね」
ネプスは言った。
「どこにあるんだ?」
と声を上げたネドに、
「こっちだ。総統の指示で、厳重に保管されている」
とドクター、ネプスは片手を上げて方向を示した。
そこは医務室の隣の小部屋で、ドアを開けるとなるほど、いくつもの光線の筋に守られて、古びた機械が置かれている。
ただの古い機械だ。しかし、
「どうして?」
とネドは声を上げた。この光線の筋が近寄ることを拒否している。
「僕らは、もう油断することを止めたからだよ」
ネプスが応えた。
ネプスが続けた。
「ネド、あの巨大な移民船がなぜ、君しか生き残らない事態になったかわかるかい?」
「いや、ネドとあの狂った精神科医だ、生き残ったのは」
脇から、マシアスが声を上げた。