隣で小声で大臣らしい男が王様になにやら話しかけた。
やがて王様は、副長の方を向くと、
「ヌコじゃが、なかなか取れぬ。特に今の時期はな」
「・・取れないと申されますと?」
「ま、そういうところだ。ところで、その方らは商人であろう。武器は売っておるのか」
ネドの顔に緊張が走った。通訳して副長に伝えると、皆にも緊張が走った。
「武器は売ってはおりません」
「そうか、売ってはおらぬか。うーん。だが、クワンという国は、優れた武器を持っておるのか。我々のとは違うのか。比べてどうじゃ」
「同じかと思われます」
ネドが副長の答えを通訳すると、
「同じか」
と言って、王様は少し黙っていたが、やがて、
「その方らは今は武器は持ってはいないが、長い旅をしてきたのだ。全く持って来なかったわけではあるまい」
「・・・」
「それでじゃ、その方らでヌコを取りに行かぬか。いや、その方達のうち一人でヌコを取りに行ってもらおうか。一人ずつ行ってもらおう。後のものは、ここに残れ」
どういうことだ?ネドは困惑しながら通訳を急いでしたが、王様が手をあげて合図をすると、壁に並んでいた衛兵が上陸班の周りを囲んだ。
「これはどういうことでございますか?」
「これはどういうことで」
ネドが副長の言葉を通訳し終わらないうちに、大臣らしい男が言った。
「そちらは状況が分かっておらぬのか!」
口調が変わった。
咄嗟にネドは私に行かせて下さい。ここのことはわかっていますから、と副長にささやいた。
30分後、ネドはこの城の厩にいた。動物の皮に書かれた地図を手に持って。
広げて眺めてみたが、タパの町との距離から考えると、目標地点までは結構距離はありそうだ。同じくらいか。
ガサガサ人が近づいてくる音で振り返ると、兵士が、街で見たような黒色の布で全身を覆った女をひっぱってくる。
ネドのところまで来ると、兵士はネドに向かってそら、と言って女を突き飛ばした。
帰ろうとした兵士に、
「ちょっと待ってくれ、これはどういうことだ」
驚いてネドは声を上げた。