僕ら洞窟の調査班のリーダーとなった士官が、後方のベンチの僕らに声をかけた。
「了解」
「了解」
「じゃ、また」
と、ネドはドルーに小さく声をかけて、会話は終わりとなった。
小型船から降りると、着陸地点である草地の後方は大きな山で、その手前にはうっそうとした林が続いている。
僕らは、そのうっそうとした林の中を抜けて、センサーで確認している洞窟へと徒歩で向かった。
もともと林自体が未調査の地域である。宇宙連邦軍の士官は、それぞれがセンサーを手に持ち、学者の荷物を一部もって、彼らに危険がないか気遣いながら、ゆっくりと進んだ。新しい動植物発見につながるかもしれないため、非常にゆっくりと歩く学者の歩みに合わせて、部隊は、ゆっくりと薄暗がりを進んでいった。
幸いなことに、ネドは直接、学者たちの面倒を見る事態にはならなかった。
一応、周りには注意はむけて歩いているのだが、それでも張り詰めた緊張が解けたためか、ゆっくりと、ただひたすら歩き続けているネドの脳裏に、昨夜のサライ最高司令官との不愉快なやり取りが、蘇ってきた。
僕がこの宇宙連邦軍に入隊して、4年となっている。もともと、ケネス星から考えると、無謀なことをし続け、隊員の死亡事故が減っていかない宇宙連邦軍に、ケネス星人は批判的であった。
ケネス宇宙軍の、僕に対する影の援助も、際限なく続いている。
昨夜、ケネス星のケネス宇宙軍本部に僕を呼び出した、ケネス宇宙軍サライ最高司令官によると、この間のネメス星のヤデン救出劇のあたりから、ケネス星人の、宇宙連邦軍に対する批判の声が更に大きく成ってきているとのことだった。
サライ最高司令官は、僕をみつめて、こう言った。
「自ら危険に飛び込むことだけはやめてくれないか」と。
僕は、前々から、宇宙連邦軍が外から、たいした調査もしないうちに、新しい惑星に隊員を着陸させて直接調査を行う姿勢に、危険を感じていた。事実、毎年、このような調査で犠牲者を出していることを知っている以上、僕は、コンントロールルームで安穏としてはいられなかったのだ。
地上任務には必ず志願すると決めていた。いや、危険と思われる任務には、か。
サライ最高司令官の言葉に、僕は、
「僕は、僕のやりたいようにやります。別に助けていただかなくても、結構です」
とそれだけ言うと、左前腕を触って、唖然とするサライ最高司令官を残して、その場を後にし、転送で戻ってきたのだった。
歩みが突然止まった。植物学者が珍しい品種をみつけたのか。動物学者が珍しい小動物をみつけたのか。