「ありがとう、ノード」
ノードはネドの荷物を受け取ると、転送室脇の外壁のくぼみの上の小さな器械をつまんで、ネドの荷物に付けた。何時ものように荷物はふわりと浮かび上がった。
ノードは
「ご自宅ですね」
と意味ありげな顔をした。
このケネス宇宙軍の転送室からネドの自宅までは、内部通路を通っていけば、それほど距離は無い。
「ああ、でもあまり時間は無いんだ。明日からわがケネス宇宙軍の仕事なんだ。今日はつかの間の休日なんだ」
「大変ですね、坊ちゃま。それでは、今日は坊ちゃまのお好きなものをご用意しましょう」
「ありがとう、ノード」
「ところで、おじいさまに逢いに行かれますか?」
「うーん」
「今日は疲れておいでのようですね」
「うん、実はそうなんだ」
「でしたら、おじいさまに、お夕飯の時に、坊ちゃまのお家に来ていただいたら、よろしいでしょう」
ふっ、ノードはわかっているなあ。
僕は苦笑いをして頷いた。僕の家に着いた。
やはり、僕のケネス宇宙軍での勤務の件は、ノードの耳に入っていたようだ。
僕の寝室のクロゼットには、すでに僕のケネス宇宙軍の制服がかかっていて、そして僕の着替えを入れた荷物が、もうベッド脇に準備されていた。
さすが、ノードだ。
早めにおじいさんと夕飯を取って、ノードとおじいさんに、テラでの出来事を土産話に聞かせて、やがて夜となり、おじいさんとノードは早めに帰っていった。
いよいよ翌朝になった。
ネドは緊張した面持ちで、ケネス宇宙軍の制服に着替えて、内部通路を取って、ケネス宇宙軍本部の転送室へ行った。手にはノードが用意してくれたカバンをもっている。
ケネス星へ帰っている姿を、他星人に見られてはならない。
ネドは、勤務先となったギガのキャプテン、キースのもとへ、直接転送で出頭した。
ギガのコントロールルームの端の、キャプテンの執務室の扉の外に転送してもらって、身を固くしながら、ネドは自動ドア脇のインターホンを触ろうとした。が、触る前に、ドアがシュッと開いた。なるほど、ケネスである。
「どうぞ、ネド少尉」
中からキャプテン、キースの声がした。