転送技術の秘密保護は常に優先される。
ネドは捕虜からは直接見えない通路に転送された。
「後から来てくれ!先に行きます」
副長シリスはエレベーター付近に集まった救出部隊のサブリーダーとキャプテン、キースに、顔を向けてそれだけを言うと、左前腕を触った。
「ネドのもとへ」
と言って、ネドの後を追ってギーア船に転送侵入した。
すぐに、キャプテンキースは二人に防護シールドを張らせた。
ギーア船の中に転送されたネドは、すぐにベルトに差していた宇宙連邦軍の銃を抜いて構えた。
すぐに脇の空間が光って、シリス副長が実体化した。
銃を構えてネドと周りを確認する。
「ケネスの銃を一丁ここへ」
左前腕を触って命じた。
「ネド、銃を替えなさい。壁を損傷する恐れがある」
副長シリスの頭に、最後に見たギーア船の人員配置図が蘇る。この留置所近くの通路には何人、どこにいたか。シリスの頭は目まぐるしく回転した。中型船にしては、乗員がかなりいる。部屋の外にも中にもいた。
通路側の扉がロックされた頃だろう。
部屋に入れなくなった乗員は、コントロールルームに向かうか、ここの近くにいた者なら、ここの留置所を見に来るかもしれない。
ぐずぐずしていれば時間の経過とともに、ロックされて部屋の中に閉じ込められたギーアの乗員が、扉があかないことに気づき、部屋の扉を武器で破壊するのも時間の問題だろう。
副長シリスは左前腕を触って、ケネスのコンピューターに、当初の計画通りにコントロールルームに向かう通路を選ばせて、左前腕から赤いビームを出させて、道案内をするように命じた。
「ネド、先にコントロールルームだ。でなければ救出はできない」
副長シリスはネドとコントロールルームへ向かった。
さて、オープンになっている非常通信から直接事態を知った本部のサライ最高司令官は、顔面蒼白となって固まったが、正面スクリーンに映し出されている、刻々と変わるギーア船の人員配置図をチラと見ると、すぐにギガのキャプテン、キースに計画変更を告げた。
「キャプテン、キース、すぐ救出部隊をギーア船に侵入させてくれ、転送場所はネドだ」
「はい。最高司令官」
キャプテン、キースはギガのコントロールルームの後方にチラと目をやって副リーダーと目を合わせてから、脇の士官に、
「防護スクリーンを張ってから、転送だ」
と指示をした。ギガの救出部隊の副リーダーは全員に指示して銃を構えさせた。
一方、赤いビームを辿ってコントロールルームに向かおうとしたネドと副長シリスの耳に、複数の足音が聞こえてきた。
途端、通路にグレーの制服姿のギーア星人4人が現れた。
来た。見られた!