ネド達二人は、荷物のカートをそれぞれ押しながら、荷物シャトルの発車場へ向かった。
荷物シャトルに乗ってみると、間仕切りのない空間で、シャトルの壁面に沿って柵ができていて、商人たちは柵の中におのおの荷物を入れて、柵についているひもに荷物を括り付けている。
商人たちはというと、シャトル中央部分に何本も立っている柱に、自分の身体をこれまた柱についているひもを使って括り付けている。
奇妙だが、同じようにするしかない。ネド達もカートごと荷物を柵の中に入れ、ひもで荷物を固定し、柵を出ると、同じようにシャトルの柱に自分たちの体をひもで固定した。
シャトルが動き出した。これで、大気圏突入の圧力に耐えるのである。ネドはもう、なるようになると覚悟を決めて、寝ることにした。
大気圏突入は、さすがにすごい圧力と振動と騒音を乗客にもたらした。寝てはいられない。
ネメス星の地上の基地にシャトルがやっと着くと、ネドとミランは、荷物のカートを押して、宿を目指した。時刻は昼下がりである。道順は学習済みである。
ネドの先導で、商人たちの定宿、安ホテルの前に着いた。ざっと見てみると、汚いが大きい建物である。中に入ると、正面に、大きいエレベーターがある。荷物用エレベーターだ。
ネドはミランに合図して、ロビーで待たせて、ホテルのフロントで宿泊の手続きを行った。あっさりと宿泊手続きが済み、二人は、ホテルに割り振られた2階の部屋に、荷物と共にエレベーターで上がった。
上がった2階は、部屋がたくさん並んでいた。いや、大きい倉庫を、ただ、板で間じきりし、分けて部屋にしたに過ぎない様だ。
ネメス星人たちの声が、あちこちから聞こえてくる。
自分たちの部屋の戸を開けて中を見てみると、部屋全体は薄暗く、ベッドが2つある以外は何もない空間であった。
荷物のカートを押して、部屋に荷物を入れて、ネドはミランに合図をして、ベッドに横になった。ネメス語以外はしゃべれない。筒抜けである。
早朝、ネド達の部屋の薄い板戸を叩く者がいる。
トントントン
続いて、男のネメス語が響いた。
「デゴンさん。デゴンさん。ミゼルです。いい話があるんですが、開けてくれませんか?」
計画より早い。
ネドとミランは飛び起きた。戸を開ける。
現れたのは、40代であろうか、商人風の男だ。ネメス星人特有の薄い緑色の肌をして、茶色い長い髪をひもでひとつに後ろに縛っている。背は、僕らと変わらない。