「わかった」
「シリス!妨害電波を流してくれ」
「了解。無人宇宙基地45から、今、流しました」
この速さで、行動が起こせるのは、想定した事前準備のたまものである。
「キャス通信士!」
「ネメスの通信は遮断されたようです。ネメスの宇宙基地も、先ほど呼ばれていた辺境警備船も、通信士が必死に声を上げています。互いに通信はできていません」
「わかった」
キースは左脇の士官に向かって、
「モッソ、この付近にいる船をすべて正面スクリーンの右下に出してくれないか」
と目線を向けた。
「了解」
ギガの正面の大スクリーンは、正面右に宇宙の闇の中を全速力を出して直進するネドの小型船を映し出していたが、そのスクリーンの左下に、この付近の船の位置を光らせた地図が映し出された。
これから、どれ程の船が関わってくるのか。
先ほど呼ばれた辺境警備船は、おそらく進路変更してくるだろう。最初の通信が入ってしまっている。
見ていると、ああ、今、中型船が一隻進路変更している。
刻々と状況が変化して行く。
「キャプテン、小型船後方のネメスの中型船ですが、推力を全開にしています」
「どの位で小型船は中型船の撃墜ビームの範囲内になる?」
キャプテン、キースの左脇の士官がすぐ応えた。
「後30分ほどです」
必死で前方を進んでいくネドの小型船を見つめながら、キースの思考が目まぐるしく変化した。
逃げきれないな。
そして逃げきれたら、おかしい。
騒ぎを早く納めないと、ネドがテラに帰還しにくくなってしまう。
他星人が一緒となると、救出作戦は慎重を要し、下手に手は出せない。
が、打つ手は急を要する。
「キャプテン、ネメスの中型船が、テラの小型船に、通信で停止を迫っていますが、テラの小型船は、通信を切っているようです」
「わかった」
キースは、右手のSEに指示をした。