昔、僕らのいたケネス星の太陽は年を取りつつあった。熱くなってきていたし、体に害のある紫外線がひどく降り注ぐようになっていた。
弱って倒れる星人が多くなっていた。
ただ、宇宙船を飛ばす科学技術は当時でも発達していたから、移民の候補となる惑星を見つけては、調査のための宇宙船を盛んに候補星へ向けて飛ばしていた。当然、他星人の存在もつかんでいた。
そして、やがて今のケネス星に移民することが決定されたのだった。
950年程前に、1歳に満たない赤ん坊の僕を乗せた巨大な宇宙移民船が、新しい今のケネス星に向けて飛び立った。移民船第一号であった。
僕の若い父親、母親もその船に乗っていた。この船は、僕の父が率いていた。
何万人規模の、大きな、大きな宇宙船だった。
しかし、この移民船は新しいケネス星、希望の星に到着することは無かった。連絡を絶ったのだった。
その後、移民は続行されて、今のケネス星への移住は完了するのだが。
この連絡を絶った移民船は、その後もずっと、探し続けられた。
通信が途絶えた地点を重点的に探していたが、全くなんの痕跡も見つけることはできなかった。
この当時、宇宙船をセンサーで追っていたわけではないので、通信機器が故障し、その後、なんらかの障害で、違った方向へ航行してしまったのだろうかと思われていた。どこかの惑星衛星の引力に痕跡となる破片でも捉えられる位置なら、良かったのだが。いや、生存を期待したかったのだろう。生命の存在している密度の高い宇宙域を目指して来ていたため、他の候補星に着いている可能性は、なくは無かったのである。
あまりにも多くの人間が乗っていた宇宙船だった為、ケネス星人達は、肉親を、親戚を、そして友人を亡くしたと思いたく無かったのだろう。
僕らの移住は完了したが、僕らケネス星人の身体は弱っていた。病気になる星人が多かった。
その頃、この新しいケネス星で、転送技術が開発されつつあった。
実験が繰り返されていた。
その開発途中の実験中に、とんでもない結果がもたらされることとなった。
ある日、生きた動物を転送で分子レベルまで分解して、少し離れた位置に再生するという実験中に、肉体が再生されないという事故が起きた。
しかし、その動物の肉体以外は再生された。
見た感じは薄ぼんやりとした塊で、確かにその動物らしき塊なのだ。
仰天したその科学者は、恐る恐るその再生された動物を触ってみたのだが、触った感触はあるのである。
その塊は、動くことは可能なようだ。肉体は無くても、肉体があるときのように動こうとしている。
さすがにその科学者は薄気味悪くなって、その場を離れた。恐怖が彼の心を支配した。