いけない!
ネドは素早く起きるとシャワーを浴び、着替えて食堂へ向かった。
着くと、もう、ミランは窓側のテーブルで食べている。
「おはよう、ミラン」
「おはようございます、ネド少尉。急いだほうがいいですよ」
「え?」
「船内メールを見ていないんですか?」
ミランは奥の壁のスクリーンを指した。
食堂の、掲示用の大画面の両脇がグリーンに光って、乗員に臨時の任務の発生を告げている。
「早出以外の入職2年目、3年目の職員は、全員会議室に集合ですよ」
「何かな?」
「行けばわかりますよ」
さっと食べてミランと会議室に行くと、ほぼ満席状態である。
やがて、副長のバラン中佐が正面の台の上に立った。
全員が静粛となる。
「おはよう、諸君。では始める。新しい任務だ。君たちにとってはまあ、めずらしい任務だろう。諸君の中で、ベーター星に行ったことのある者ははいるかな?ん?静に!そうだろうな。いないな。さて、今回の任務はベーター星についての任務だ」
ベーター星は宇宙連邦の中で南に当たる星である。
ガヤガヤと若手乗員たちに動揺が走っている。
「静かに!その通り。ベーター星は宇宙に進出していない星だ。だから、我々は公式に訪問するわけではない。当然、非公式で、住民にまぎれて職務を遂行することになる。今回の地上での任務では、宇宙連邦軍としては私を入れて4名で行う。その他に、宇宙連邦から、通訳が一人派遣されてくることになっている。さて、今回、僕は、君たち3年目までの若手の職員の中から2名を連れていくつもりだ。自薦他薦の公募で行って、その中から私が選ぶ。私宛に船内メールを送ってくれ。自分をアピールするいい機会だぞ」
公募形式とは珍しい。若手の啓発目的か。
副長バランは集まった乗員の反応を見ながら、話し続けていった。
「ではまず、肝心の任務の概要を説明しよう。諸君の中で、ヌコと言う植物を知っている者はいるかな?」
再び、ガヤガヤと騒がしくなる。
「そうだろうな。いないだろうな。このベーター星の、パラスという国にヌコという植物が生えている。宇宙連邦広しといえど、この植物はここにしか生えていない。市場にもなかなか出ない貴重なものだそうだ。この植物は乾燥させるととても良い香りを放つ。料理の味も格段とよくなるそうだ。最近、宇宙連邦のおえらがたの一人がこのヌコを手に入れられて、それが評判となったそうだ。そこで、この宇宙連邦軍へ買い付けの依頼が来たというわけだ。今回我々は、このベーター星の商人となって、パラスと言う国に直接赴き、ヌコを買い付けてくる予定だ。